スタチン治療中のHDLコレステロール値は心血管リスク予測上役立たない?

JUPITERトライアルのpost hoc analysisで、スタチン治療によりLDLコレステロール濃度極めて少ないとき、もはや善玉コレステロールは心血管疾患の予後と関係なくなる



Ridker PM, Genest J, Boekholdt SM, et al. HDL cholesterol and residual risk of first cardiovascular events after treatment with potent statin therapy: An analysis from the JUPITER trial. Lancet 2010; DOI:10.1016/S0140-6736(10)60713-1.


JUPITER 被験者は、糖尿病もしくは心血管疾患既往者で、ベースラインLDL <3.37 mmol/L(130 mg/dL)、hs-CRP >2mg/Lで、rosuvastatin 20mg/dとプラセボに8900名ずつランダム割り付けされたもの

新規解析では、HDL-コレステロール濃度はプラセボ患者(治療中LDL-コレステロール中央値  2.8 mmol/L)に対して心血管疾患に対しベースライン時に逆相関e (hazard ratio, 0.54; p=0.0039) 、治療患者に対しても逆相関t (HR, 0.55; p=0.0047)

逆に、rosuvastatin(治療群でのLDL中央値 1.42 mmol/L)では、HDLコレステロール4分位と血管リスクは有意でなかった、それはベースライン (HR, 1.12; p=0.82、治療中(HR, 1.03; p=0.97)ともにである。

アポリポ蛋白 A1の同様解析で、プラセボ群では同等なプライマリアウトカム頻度の関する相関がみられるが、rosuvastatin群では関連が少なかった。



Ridkerらは、TNTトライアル、PROVE-IT TIMI 22といった、二次予防トライアルからのデータとして一致したもので、HDLコレステロールが高用量スタチン治療をされているとき、もはやHDLコレステロールは予測リスクとはならなくなっていると述べている。


しかし、
以下の論文コメントで、Hausenloyは、必ずしも一致した現象ではないとし、明らかな低LDL(1.5 - 2.0 mmol/L)の時にHDL-Cが予測因子であるという報告を提示。たしかに”very low" LDLのときにはそうなのかもしれないと、さらなる検討が必要と述べている。
Hausenloy DJ, Opie L, Yellon DM. Dissociating HDL-cholesterol from cardiovascular risk. Lancet 2010; DOI:10.1016/S0140-6736(10)61021-5.



HDLのbiologyはLDLより、複雑・・・というのがdeGomaの意見(http://www.theheart.org/article/1103731.do

by internalmedicine | 2010-07-22 17:57 | 動脈硬化/循環器  

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