フットボールにもボクシングのような反復頭部外傷による認知機能、軸性障害など・・・遅発性明らかに

今まで、ボクシングという競技の危険性を、繰り返し書き込んできた。

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にもかかわらず、テレビ業界など無頓着で、より危険性の高い格闘技を高校生にまで拡大してあおる始末。
K-1甲子園:危険性への配慮が足りなさすぎる  2008-09-03

フットボールでも、この影響は確認されつつあり、ラグビーなどの競技でも注意すべき事態であることを関係各位留意すべきだろう。


直訳すると、「頭蓋骨は、脳を、厚い骨による防御の役割を果たすが、不規則なインテリアにより、防御破綻による脆弱組織へのダメージをもたらす可能性がある。」


7月下旬に、全米フットボール・リーグは、リーグのロッカールームに浸透による長期的影響に関する広告ポスターを導入した。交通損傷・戦争(爆風損傷)だけでなく、アメリカンフットボール・ボクシングのような反復性外傷をもたらす可能性をもつスポーツなどに潜在的病的意味合いの認識が新たとなってきている。
毎年、アメリカでは150万人を超える人たちが、意識消失のない、または、入院までは必要としない軽度の外傷性脳損傷を経験している。


急性の外傷後、感覚性、運動性、神経認知機能症候群は、損傷、軸性障害、すなわち、” mild closed-head injury”が頭蓋骨骨折なしに生じる。慢性の頭痛、めまい、集中障害、言語早期障害、うつ、いらいら、衝動的感覚などを生じる可能性がある。

外傷性能障害とこれら遅延性の神経障害の原因的関連の研究は不十分で、latency period期間のばらつきがあることが原因。重度の単回外傷は頭蓋骨骨折の有無にかかわらず、完全な回復不能な、潜在性の感覚、運動、認知機能障害を生じる可能性がある。もし意識消失が30分以上の場合、初期外傷から回復しても、アルツハイマーリスクが増加する。
病因・病態に関して知識不十分であるが、考えられているのは、” diffuse axonal injury (Spectrum of Pathologic Features and Outcomes of Traumatic Brain Injury (TBI))”であり、多くの生理学的過程の変化が関与すると想定される。proteostasisの変化が明らかであり、病理レベルでproteopathyと考えられるレベルの存在もある。
idiopathic と外傷後neurodegenerationの病的過程はオーバーラップが存在する。
外傷後2時間で、可溶性 amyloid-β (Aβ)が増加し、アミロイド・プラークの蓄積が年齢と関連無く30%程に見られる。
急性単回外傷後脳障害では、20-30%にアルツハイマー病、パーキンソン病が見られるが、対照は8-10%と増加している。未発見の遺伝的・環境的・身体的要因がこのdelayed post-traumatic parkinsonismと特発性のパーキンソン病と鑑別するものがあるかもしれない。

反復性の軽度頭部外傷による神経認知機能低下は、ボクシングで見られ、単回頭部外傷エピソードの臨床的・病的合併症と区別されるべき病態である。
パンチドランカーなどで日本では有名な、dementia pugilistica (punch-drunk syndrome)は” prominent tauopathy, with typical neurofibrillary tangles and neuropil threads, distributed in patches throughout the neocortex”と関連する。
単回アクシデントで生じるdiffuse Aβ amyloidosis はneurofibrillary tangleが無い
dementia pugilistica は、Aβ depositionがなく、taunopathyは顕著、特に、esiotemporal regionで多く、アルツハイマー病でまず見られるtangleである。これは少ないのが普通。
1980年代からの研究で、引退ボクサー、ラウンド数が、認知機能障害の有意な予測因子となっている。
ノックアウトされたボクサーでは、APOE ε4 alleleを有する方が有しないものよりパンチドランカーになりやすい。パーキンソン病態もこのパンチドランカー状態と相関する。
このpugilistic parkinsonism で neurofibrillary tangleが多く、レビ小体が存在しないことが、特発性パーキンソン病との鑑別で役立つ。

フットボールプレイヤーやレスリングでの研究でも、認知機能・神経精神減衰が見られることが、選手たちの後年に見られる。フットボールプレイヤーでの認識はここ数年で、剖検でやはり、dementia pugilisticaが見られた。


Traumatic Brain Injury — Football, Warfare, and Long-Term Effects

Steven T. DeKosky, M.D., Milos D. Ikonomovic, M.D., and Sam Gandy, M.D., Ph.D.

September 22, 2010 (10.1056/NEJMp1007051)




脳脊髄液なんたらや低髄圧なんたらを主張されている方々は、直接、頭部外傷が外見で明らかでない外傷性変化が組織レベルで生じていることを認識してまずそこを検討すべきでは無かろうか?単にブラッドパッチしたいがために病名をごり押ししているという見方さえできる。

by internalmedicine | 2010-09-24 09:12 | 精神・認知  

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