カナダ:高齢者心不全終末期の医療資源使用状況 :日本の終末期医療は癌にばかり偏りすぎ
2010年 10月 12日
死に瀕する疾病にあえぎ苦しみ、その中で希望を見いだし生の充実感を得ようとしているのは、どの終末期状態でも同じなのに、医療資源を、疾患名による偏った配分をおこなわれている現状なのだ。
ホスピス・ケアの対象疾患名、医療報酬上での悪性腫瘍に対する加算の数々がその具体的施策の具現である。
諸外国では、当然ながら、終末期医療の中身に、これら心不全、COPD、肝不全・・・など、別疾患もふくまれる。
カナダでの高齢者心不全終末期(死亡前6ヶ月)の検討
入院で看取る率は若干減少。しかし、在宅死はふえてもコスト増加。
ONLINE FIRST
Resource Use in the Last 6 Months of Life Among Patients With Heart Failure in Canada
Padma Kaul, PhD; Finlay A. McAlister, MD; Justin A. Ezekowitz, MD, MPH; Jeffery A. Bakal, PhD; Lesley H. Curtis, PhD; Hude Quan, MD, PhD; Merril L. Knudtson, MD; Paul W. Armstrong, MD
Arch Intern Med. Published online October11, 2010. doi:10.1001/archinternmed.2010.365
33144名の心不全死亡患者、平均年齢83歳
臨床的特性は、時とともに合併症増加
2000-2006年の間に、最後6ヶ月間の入院比率84%から76&に減少 (P < .01)
入院死亡も60&から54%へ減少 (P < .01)
2006年、平均EOLコストはカナダドルで$27 983
多変量解析にて、年齢増加とともにEOLコストは逆相関し減少、合併症は高コストと相関する。
”在宅医療って、施設医療に比べ、金がかからない”・・・という妄想が、あそこそこにある。
考えてみればわかるが、医療というのは、本来、コストの半分くらいは人件費である。ひとりひとりの利用者のためにアクセスするためのコストは、かりに、ITやらなんやら先端技術が使われたとしても、施設におけるコストに比べればかなり割高につくって、馬鹿でもわかるはず。 にもかかわらず、厚労省あたりが先頭になって、医療費削減のため、在宅医療推進を!ってやっている・・・馬鹿丸出し。
在宅医療推進する意味合いはあくまで利用者のWell-beingのためである・・・そのことをいつのまにか日本の為政者・マスコミ・医療関係者までもわすれている。
まともな在宅利用は金がかかる。コスト削減いっぺんやりの、いいかげんな在宅医療の推進はかえって、利用者のwell-being低下をもたらす。
日曜の日テレ系番記者って腐った番組があるが、昨日、あそこの元特別検察OBのおっさんが、「勤務医は大変のに、開業医はゴルフして遊んでる」と発言していた。どうも医者はゴルフをしてはだめらしい。そして、こいつの言い分だと、捜査取り調べの可視化もだめで、検察庁を非難することもだめらしい。
こいつらの軽薄な発言と、市井・政治家のポピュリズム指向、官僚の我田引水思考があいまって、偏った医療施策とつながるのだろう。
開業医をつぶす施策に進んでいるようだが地域に放出された終末期疾患患者を誰が診るのだろう?そして、終末期にいかないようにする一次予防・二次予防はだれが担当するのだろう?
今後10年20年後、ナースプラクティショナー(NP)が活躍するのだろうか・・・まぁそれまでに、地域医療は崩壊をし続ける。
by internalmedicine | 2010-10-12 08:40 | 医療一般