代謝がよくなる、血流改善して体から毒素を・・・

意味のわからない言葉が、使われている。

二日ほど前、朝、いつもと違うテレビ局の番組つけてしまった。すると、どこぞの女医さんが、皮膚の”新陳代謝”という言葉を多用し、しまいには、”血流悪化・毒物排泄遅延説”・・・という、なんだか訳のわからない解説をしていた。まだ、お若いのに、時代錯誤の非科学的講釈をたれてるこの女医さん・・・かわいそうになったが、真に受ける視聴者がもっとかわいそうだ。

・(新陳)代謝が良くなる
甲状腺機能亢進のときの代謝亢進とは、”basal metabolic rate”、基礎時代謝率、すなわち、安静時のエネルギー消費量亢進を意味する。他、”糖代謝”もよく用いられるが、、"carbohydrate metabolism"は、ブドウ糖などの単糖類がそれぞれの代謝経路で消費されることを意味する。
ところが、こまったことに、”新陳代謝”という意味不明な擁護がある。これは、cell cycleの影響を与える話のようで・・・体の旧い部分が排除されてあたらしくなることのようだ。wikipediaに、夏目漱石など起源とする説が書かれている。いずれにせよ、科学的に実証された用語ではない。


・血液の流れが悪い→”体の中の毒”の排泄が悪くなる

漢方の「瘀血(おけつ)」からインスパイアされている考え。

臓器潅流障害と混同され、さらにNHK起源の”血液さらさら”が、言葉の混乱に拍車をかけたと見ている。

デトックス”が組み合わされたとみる(他、参考)。

”血流改善で、体の毒素が排出され・・・”などともっともらしく解説がなされるようになった。

筋肉の疲労における、細胞内乳酸と水酸化イオン蓄積に基づくという古典的説明(Physiol. Rev. 88: 287-332, 2008;)や、筋肉のこりにおける”筋肉は緊張し血流の低下を引き起こし、(その血流障害により)痛みが悪化する”という説明との混同もこれに荷担している(これ自身は科学性があるのだろうが・・・)。

ちなみに、肩こりも、夏目漱石の「門」が初出であるという話がある。・・・迷惑な名作家である。

by internalmedicine | 2010-11-04 15:22 | その他  

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