てんかん:抗けいれん薬後の再発リスクと運転への影響

てんかん事例への自動車などの運転操作の問題に関わると思うのだが・・・

ランダム化対照トライアルにて、抗けいれん薬開始後の次の12ヶ月における再発リスクは、20%未満 (unadjusted risk 14%, 95%信頼区間 10% ~ 18%)
治療開始しなかった場合のリスク推定は20%未満だが、信頼区間上限は20%を超える20% (18%, 13% ~ 23%)

多変量解析にて、次12ヶ月間中の20%を有意に超えるけいれん再発と関連するのは、異常脳波を揺する remote symptomatic seizure のような事例である。


Risk of recurrence after a first seizure and implications for driving: further analysis of the Multicentre study of early Epilepsy and Single Seizures
BMJ 2010; 341:c6477 doi: 10.1136/bmj.c6477 (Published 7 December 2010)
Cite this as: BMJ 2010; 341:c6477




Acute symptomatic seizureは状況関連性発作と同義として使用されることが多いが,より器質的な脳侵襲を来す疾患の急性期にともなう発作に対して使用し,熱性けいれんのような機能性,良性の病態は除外されることもある.その原因としては薬物や代謝性あるいは中毒などの誘発因子に加え,頭部外傷,脳梗塞,脳出血,脳腫瘍,急性脳症,頭蓋内感染症などが重要である.通常最初の脳侵襲から1週間以内におこる.それ以降,一旦脳が安定してからおこる自発性の発作はremote symptomatic seizureとして区別され,狭義の症候性てんかんをさす.
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/terndoc.pdf



自分たちは誤謬だらけなのに、現場には無謬性を強いる、日本の司法・行政・・・てんかん患者たちへの運転免許付与はどうなってるのか?

道路交通法の改正
新法(http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/2002_1.html)
旧法88条の絶対的欠格条項は廃止され、新法90条1項本文において、運転免許試験に合格した者に対し、「免許を与えなければならない。」としつつ、同項但書において以下の病気にかかっている者については、免許の拒否又は六月を超えない範囲内において免許を保留することが「できる」ものと規定された。

1. 幻覚の症状を伴う精神病であって政令で定めるもの
2. 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの
3. A又はBに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの

尚、知的能力や身体的能力については、運転免許試験(法97条)で確認することとされ、身体的能力については、道路交通法施行規則23条に適正試験の基準が規定されており、この適正試験の基準の変更がない限り、新法になったから といって、身体に障害のある人の免許取得範囲が広がることにはならない。

ちなみに、聴覚に障害のある人に対する合格基準は、補聴器を付けて10メートル離れて90デシベルの警音器の音が聞こえることとなっている。

又、新法103条は、絶対的欠格条項を改正し、免許を受けた者が次に掲げる病気にかかっている者であることが判明した時は、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することが「できる」と規定した。
4. 幻覚の症状を伴う精神病であって政令で定めるもの
5. 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの
6. 痴呆
7. イからハまでに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
又、臨時適性検査の規定では、免許が保留された等の場合に、臨時適性検査を受けるか診断書を提出するよう命じることができる。


政令:てんかん
発作の再発のおそれはないと認められる場合、発作の再発により意識障害及び運動障害がもたらされない場合、ならびに発作の再発が睡眠中に限って起こると認められる場合には免許の拒否等を行わない。

by internalmedicine | 2010-12-10 09:16 | 精神・認知  

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