目隠し・騙しなしでも、偽薬有効

プラセボは、目隠しか、だますことが必要とされてきたが、オープンラベルの偽薬でも過敏性腸症候群(IBS)治療に関して無治療群より優れていることが分かった。

Placebos without Deception: A Randomized Controlled Trial in Irritable Bowel Syndrome
Kaptchuk TJ, Friedlander E, Kelley JM, Sanchez MN, Kokkotou E, et al.
PLoS ONE 5(12): e15591. doi:10.1371/journal.pone.0015591



オープンラベルの偽薬で、11日中間地点、21日最終日において、平均 (±SD) global improvement scores (IBS-GIS) の有意な改善を認めた (5.2±1.0 vs. 4.0±1.1, p<.001、5.0±1.5 vs. 3.9±1.3, p = .002)

有意な結果は、症状重症度 (IBS-SSS, p = .008 and p = .03) やadequate relief (IBS-AR, p = .02 and p = .03)でも改善。
オープンラベルの偽薬では、QOL(IBS-QoL)でも21日目最終日でも良好な傾向あり (p = .08)




プラセボ効果の複雑さ・・・

abcニュースでも取り上げられている。
http://abcnews.go.com/Health/placebos-work-deception-study/story?id=12462093

・自然治癒を期待する気持ちが、'self-healing processes'、すなわち、自然治癒に向かわせている?
・あるいは、効くはずのないものを服用していると聞かされても、その効果を期待する気持ちがあるのではないか?すなわち、回答に対して、現実以上の良好な回答をしてしまう可能性。



終末期と思われる人でも、詐欺療法にだまされる人に遭遇する。詐欺療法の一つの決まり文句は、”自然治癒力”・・・状況が改善する方向に考えたいという心理機制が作用しているだろう。
アメリカでも、"impure placebo"と呼ばれる、内密なプラセボ使用が少数ながら行われており、その半分は特異的効果を期待しないものを使用している。暗示をしないで、臨床の場では、有害性のないプラセボの効果的な使用することは優先される場合もある。

上記知見のオープンラベル・プラセボの効果は、興味ある現象であり、プラセボ治験や日常臨床、代替治療やインチキ治療などに関して、謎解きのヒントとなるのかもしれない。

by internalmedicine | 2010-12-25 11:08 | 医学  

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