サソリ刺傷治療:抗毒素+プラゾシン v プラゾシン単独

当直の時、サソリ刺傷の患者が来たらどうしようと・・・夜も眠れないことがあった・・・・ってのは嘘だが・・・そのへんの研修医向け救急本に記載がない・・・当たり前か。




サソリ毒としては、Na+ channel への働き(Toxicon Volume 46, Issue 8, 15 December 2005, Pages 831-844 )があるようだ。

そして、サソリ刺傷へのプラゾシン治療に関しての報告(the Lancet Vol. 327 (8379) 1 Mar. 1986 p510-511)がある。心血管系障害への影響、頻拍、動悸、肺水腫、高血圧、低血圧などが生じる。α1遮断剤の効果の報告がなされている。治療としては、6時間毎のプラゾシン投与と血圧モニタリングなどプロトコール化治療がなされているらしい(J Assoc Physicians India. 2000 Dec;48(12):1175-80.

この抗毒素のベネフィットのエビデンスとプラゾシンなどの血管拡張剤の使用比較による有益性の検討が少なかった。抗毒素+プラゾシン併用と、プラゾシン単独の有用性比較研究
インドで行われた前向き、オープンラベルのランダム化対照化治験

Efficacy and safety of scorpion antivenom plus prazosin compared with prazosin alone for venomous scorpion (Mesobuthus tamulus) sting: randomised open label clinical trial
BMJ 2011; 342:c7136 doi: 10.1136


サソリ(Mesobuthus tamulus)刺傷・毒刺入により重篤な心血管への影響がもたらされる。サソリ抗毒素は、特異的治療である。

重症度2以上のサソリ刺傷で、6ヶ月齢超、非心臓・中枢神経系疾患ないものを対象

介入:サソリ抗毒素+プラゾシン (n=35) or プラゾシン単独 (n=35)

主要アウトカム測定:治療投与後10時間での臨床的症状改善比率(発汗、流延、四肢冷感、持続勃起症、高血圧・低血圧、動機)
二次アウトカム測定:臨床症状の完全寛解までの必要時間、高度障害予防、プラゾシン投与必要性、副事象

結果:
平均 (SD)回復時間
プラゾシン+抗毒素 v プラゾシン単独:腫脹 3 (1.1) v 6.6 (2.6); 流涎(salivation) 1.9 (0.9) v 3 (1.9); 持続勃起症(priapism) 4.7 (1.5) v 9.4 (1.5)

プラゾシン+抗毒素軍の32名s (91.4%, 95% 信頼区間 76.9% to 97.8%)は、治療後、臨床症状10時間で完全寛解、対し、プラゾシン単独群は8名 (22.9%, 11.8% to 39.3%)の完全寛解

併用群患者の方がより急速に対照群より回復(平均 8 時間, 95% CI 6.5 to 9.5 v 17.7 時間, 15.4 to 19.9; 平均差 −9.7 hours, −6.9 to −12.4)

高度障害をきたす患者数比率は両群同様 (併用群 4 / 35、プラゾシン単独群 5 / 35)

高血圧は併用群のほうが減少(12/ 35, 34.3% v 19 / 35, 54.3%)だが、差に有意差なし。

血圧の差はなく、脈拍も2群差なし


サソリ刺傷(http://merckmanual.jp/mmpej/sec21/ch325/ch325f.html

当たり前だが、サソリにも種類があるようで、それにより、重症度など症状が違うようである。

上記サイト記載だと、
重篤な症状は小児において最も一般的であり,情動不安,筋攣縮,異常で不規則な頭部・頸部・眼の動き,不安および興奮,流涎および発汗などである。成人では,主に頻脈,高血圧,呼吸促迫,脱力,筋攣縮,線維束収縮が現れる。呼吸困難は小児・成人を問わずほとんど起こらない。6歳未満の小児および過敏症の受傷者で,C. sculpturatus の咬傷による死亡例がある。


持続勃起症がサソリ刺傷の症状としてあると初めて知った(http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=1&ved=0CBgQFjAA&url=http%3A%2F%2Fdergi.omu.edu.tr%2Findex.php%2FJECM%2Farticle%2Fdownload%2F981%2F1047&ei=kV8mTaKwFpH0cbbb2McB&usg=AFQjCNEY7rWarJKI24CrzAhokrbUOndQJA&sig2=U8DBel_DYkkkIv6LxdWRNg)。小児の持続勃起症は稀で、鎌状赤血球症以外、サソリ刺傷に特異的に近い病態らしい。


これで、当直の時、サソリ刺傷症例が来てもあわてない???

by internalmedicine | 2011-01-07 09:23 | 環境問題  

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