院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎・医療ケア関連肺炎:ATS/IDSAガイドラインを守らないほど死亡率減少

時々、司法判断で、医療ガイドラインが金科玉条であり、法律的に用いられることがある。これは大きな間違いであることは医療関係者なら知ってるはずなのだが・・・時折、勘違いされる。法律事務所の中には、診療ガイドラインを材料にすればよいと医療訴訟をあおっているところもあるくらい。

ガイドライン遵守しない方が予後が良かったなんてことはいくらでもあり得る。だからこそ、医者が必要なのだし、医者の個別判断を無視する傾向にある行政や司法判断に対するむなしさを感じることにもつながる。

ATS/IDSAは、HAP(Hospital-Acquired Pneumonia:院内肺炎)、VAP. (Ventilator-Associated Pneumonia:人工呼吸器関連肺炎)HCAP(医療ケア関連肺炎)の管理ガイドラインを提供しているが、経験則に基づく抗生剤レジメンが含まれる。

経験則に基づくガイドライン通りに治療するほど、死亡率増加を示した。

多剤肺炎303名をempiricalに治療。うち、129名がガイドライン遵守、174名が非遵守
遵守例 44(34%)、非遵守 35(20%)が28日内に死亡

遵守例5名と非遵守例7名が14日後のフォローアップで死亡

Kaplan-Meierにて28日生存率推定;遵守群65%、批遵守群79%(p=0.0042)
これらは、重症度補正後も有意。

コンプライアンス比遵守は、グラム陰性菌2剤治療せずの154名やMRSAの存在しない24名の患者が含まれた。

病原体検出後、empiricalな治療は78(81%)コンプライアンス遵守群で行われ、批遵守群で109(85%)が行われていた。

The Lancet Infectious Diseases, Early Online Publication, 20 January 2011
doi:10.1016/S1473-3099(10)70314-5Cite or Link Using DOI
Implementation of guidelines for management of possible multidrug-resistant pneumonia in intensive care: an observational, multicentre cohort study
the Improving Medicine through Pathway Assessment of Critical Therapy of Hospital-Acquired Pneumonia (IMPACT-HAP) Investigator




ガイドラインはそのときの管理・治療飲めやすいに過ぎないのであり、生存期間も短いのである。
システマティックレビュー、ガイドラインも2年で2割、5年で8割あてにならない 2007-09-05


日本のガイドラインは、各分野、利益相反に関してかなり怪しいのが多く、玉虫色で、存在意義がないだけでなく、無用な紛争・訴訟の元になる場合もある。
ガイドラインの社会的地位は、特に、医療関係者以外の人が思っているほど高くないと覚えておくべきである。

by internalmedicine | 2011-01-22 08:53 | 呼吸器系  

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