だれのための過剰な薬剤副作用表示? 

薬剤情報なんて、製薬会社の責任逃れ・・・可読性や易読性なんて・・・関係ない・・・そんな思いがする。スティーブンスジョンソン症候群裁判のような例でも、副作用が末尾一行に書いてあれば、製薬会社は免責されるわけだから、何でも書きたがるだろう。

だが、本来の目的は、薬害予防・回避なのだからだれも読まなければ意味がない。


厚労省さんとは違い、アメリカFDAさんはさすがにわかってるようで・・・表示方法に関するガイドライン策定した。ところが、かえって、副作用表示項目数が増えたという・・・矛盾した現象が起きている。


薬剤の警告表示が多すぎると、だれも見ないし、気にもしない。米国での極端な例だと、150の項目を超える副作用イベントの表示がある薬剤は588、300を超える項目表示は84。対して、FDAは、警告を単純化し、薬剤に関連するラベルを減らすよう指導の方向である。2006年FDAは薬剤表示ガイドラインにて、"exhaustive lists of every reported adverse event, no matter how infrequent or minor"を推奨した。


下記研究では、5千の標準製品表示フォーマットから、53万の副作用報告を調査し、表示あたりのユニークな副作用数を0-525カウントした。

"A quantitative analysis of adverse events and 'overwarning' in drug labeling"
Duke J, et al
Arch Intern Med 2011; 171 (10): 944-946.


Cheng と Guglielmoは、リスク情報の重要性に注目するが、適切でない過剰警告は結局役立たない”と述べている。 処方者はあいまいさ、解釈困難さを無視して、既知事項や理論的可能性を根拠に処方する方向にある。DailyMedという連邦ウェブサイトからの副作用イベント抽出するソフトウェアの開発を行い、100の表示の信頼性を検討し、92.8%の回答、95.1%の信頼性であった。
上述ごとく、588の表示においては150を超える薬剤副作用表示があり、300を超えるものも84表示あった。
表示あたりの服自称イベント数の最も多かったのは、神経学的項目(n=168)、精神学的項目(n=116)、リウマチ学的項目(n=111)
1980年代から1990年代承認された薬剤と比較すると、新薬ほど有意に副作用数が多い。
興味あることに、2006年表示ガイドラインに従った構造化製品表示では、旧表示より大きくその数が増えた(72 versus 47; P<0.001)

Dukeらは、この現象は予想されたものだったとしており、新薬は多くの臨床トライアルが必要とされ、さらに市販後調査がなされている。結果、旧約に比べ、副作用イベント数が多くなったとしている。同様に処方数の多い薬剤ほど、副作用報告が多いという現象が起きている。

過剰データにより、情報過多となり、重要な安全上の警告を医師が解釈する部分も減った。

Cheng と Guglielmoは、同じ薬剤に対しても多種類の表示がなされていることのバイアス、たとえば、MTXはDailyMedではindex化されているのは10ラベル、amiodaroneでは20を超えている)

過剰な数の副作用イベント表示は、個々の患者の安全性と有益な薬剤使用に関して説明と同意に多大なる影響を与える。副作用表示複雑さを減らすためのデザイン構築し、その評価努力に注力しなければならないと書かれている。




処方薬局の薬剤情報提供所を見ると、警告数より、画一性がめだつ。便秘や皮疹などが書かれていて、ほんとに重要な副作用が書かれてないことが多い。これって、指導料目的の画一的で意味がないと思うのだが・・

日本では、”イレッサ”訴訟問題もあり、さらに、薬物副作用表示に製薬会社は精力を傾けるだろう。そして、読みにくい添付文書と・・・

裁判官ってのは、ほんとに、世の中わかってないんだなぁと・・・”スティーブンスジョンソン症候群”裁判と”イレッサ”裁判をみると・・・ ”ミクロ的視野による判断”による、”マクロ的影響”・・・そういうものを裁判官たちも学んでほしいものだが・・・


【結論】添付文書における、過剰な副作用記載は、”製薬会社を守るため”、”裁判官が医療関係者を悪人に仕立てるため”のものです。

by internalmedicine | 2011-05-25 11:18 | 医療一般  

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