スピリーバ・レスピマットの安全性疑惑: メタアナリシス 死亡率52%増加

安全性検討のためのメタ・アナリシスによると、COPD患者に対し、チオトロピム・ミスト吸入は、死亡率を52%増加させることが示唆さされた。



Singh S, et al "Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials"
BMJ 2011; 342: d3215.




5つのランダム対照化トライアルを検討対象とした。チオトロピウム・ミスト吸入は有意に死亡率リスク増加と相関 (90/3686 v 47/2836; 相対リスク 1.52, 95% 信頼区間, 1.06 to 2.16; P=0.02; I2=0%)

チオトロピウム・ミスト吸入10 µg (2.15, 1.03 to 4.51; P=0.04; I2=9%) と 5 µg (1.46, 1.01 to 2.10; P=0.04; I2=0%) 投与量とも、有意に死亡率リスク増加と相関。

random effects modelを用いた5つのトライアルの複合的fixed effect analysisの感度分析では、本体的変化を示さなかった (1.45, 1.02 to 2.07; P=0.04)が、1年間の3つのトライアルに限定しても(1.50, 1.05 to 2.15)、他の検査薬剤プログラムからのチオトロピウムミスト吸入への追加データを含めても (1.42, 1.01 to 2.00)本体的変化認めず。

5μg投与量1年間による死亡NNT(NNH?)は、124(95%信頼区間 52-5682)と、長期間トライアルからの平均対照イベント比較での推定となる。


”ミスト・インヘラーは、不本意な高濃度に成る可能性があり、パウダー・インヘラーとは別製品とも考えられる”と論文の序文に書かれており、UPLIFT研究メタアナリシスでも有意な死亡率増加報告なされてないことから、ミストインヘラー特有の有害性事象と論文はとらえていると思われる。



感度分析でも揺るがない結果! 疑惑というより確実じゃないか!

 ・・・ 担当製薬会社の詳細説明 希望




スピリーバ(R)レスピマット(R)は、”COPD治療に用いられる長時間作用型抗コリン性気管支拡張剤スピリーバ(R)(一般名:チオトロピウム)を、噴射ガスを使わずにやわらかく細かい霧状に噴霧する新世代のソフトミスト吸入器のレスピマット(R)で投与”する器具。




【追記:6月16日】本日、6月16日、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社担当MRさん訪問してくれたが、社としてこの知見への見解や、今後の診療上の対応に関し、全く情報を持ってない状況。
ほぼ同時期の”アクトスの膀胱癌”対応と比較すれば、製薬会社の対応の愚鈍さはあきらか。

呼吸器・アレルギー疾患関係でいえば、FDAのLABA使用勧告(2010年 03月 01日)に関しても呼吸器関連の場合、対応が遅く、アレルギー学会にしろ、呼吸器学会にしろ、学会としての見解発表がなされてないと思う。糖尿病や循環器系疾患の対応と比べ、呼吸系疾患では、製薬会社だけでなく、関係の権威ある医師たちの対応も問題がある・・・と、下っ端の医者は思うのである。

とにかく、”死亡率”という重大なアウトカムに関する報告なのだから、会社も、学会も迅速に対応してほしい。患者や一般医師の混乱をいち早く収束してほしい。


H23.8.8追記・・・ 一応コメントを出したが、反論根拠となる、自社データ公表せず、”ちんぴらに絡まれた”という対応。

=製薬会社:スピリーバレスピマットの死亡リスク増加報告に対する見解やっと配布 - 2011/08/02

抗コリン作用薬は認知機能を低下し、寿命を短縮する - 2011/07/04

未だ、スピリーバ・レスピレーターマット安全性和文見解ウェブ記載無し - 2011/06/27

by internalmedicine | 2011-06-15 09:01 | 呼吸器系  

<< 妊娠女性の左側臥位睡眠と後期死... 入院患者・外来患者の医療過誤賠償 >>