びまん性肺疾患の診断:臨床医・レントゲン医・病理医の連携

びまん性の肺病変は診断が難しく、診断過程がその後の予後にクリチカルなことが多く、非常に考え込むことが多いのです。そして、診断のゴールデンスタンダードが、手術的、最近は胸腔鏡をもちいることが多くより非侵襲的になったとはいえ、多大の負担を患者に与える肺生検なので、特に難しい病気だといえます。
ただ、古典的な典型的事例も多く、また、臨床的経験に依存すると思いますが、明確なBOOP(CIP)のような事例もあります。診断過程を研究した論文でした。


臨床診断、HRCT診断のPPVは約90%と言われ、IPFの30例の典型的ケースの場合、手術的生検を行うことを正当化する現在困難となっている。現在、臨床的な所見とHRCTで非組織学的に診断を行うことは実地上容認すべき状態である。
しかし、IPF以外である可能性が高い場合、組織学的情報を加えることが臨床家や放射線医の診断が変更される事がある。
Editorialから

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Idiopathic interstitial pneumonia: what is the effect of a multidisciplinary approach to diagnosis?
Am. J. Respir. Crit. Care Med..2004; 170: 904-910.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15256390
3名の臨床医、2名の放射線医、2名の病理医にて58例の間質性肺炎を疑う事例を連続にレビューし、個々の参加者が次のようなステップ毎のそれぞれの所見を記録
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step1:エクスパートな臨床医と放射線科医がHRCTを独立してレビュー
:臨床的・病理学的な情報無し
信頼レベル:1=definite、2=probable、3=possible、4=definitely not
step2:臨床情報とHRCT→診断的印象を提出
Step3:診断的印象をディスカッション、個々の診断と信頼レベルを表記
Step4:病理医がスタディーに入り込む、肺生検の解釈をディスカッション
病理医は個々に機能し、個別の解釈を書き込まない
Step5:参加者全員がおのおのの解釈を議論
コンセンサスを得ようとせず、個々の診断と信頼レベルで記載
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観察者間一致率は、Stepが進行するに従い、高くなる。

組織学的な情報提示後、放射線医は臨床医より診断印象をより多く変更する傾向にある。
多くの情報が提示される毎に診断の信頼値が増加する。高い信頼値の診断は、最終病理学的に一致した診断結果と合致する傾向にある。
最終的な一致した病理的診断IPFの30例。
病理的情報提示善に、臨床家は75%、放射線医は48%を同定。
病理組織学的病名がfinal diagnosisにもっともインパクトがあった。
最終的な結論として、臨床家、放射線医、病理医のダイナミックな関係が観察者間のそして診断的信頼性を向上すると結論づける。
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Step1から5のようなダイナミックな相互関係を利用した診断の試みというのも新しい診断手段となるかもしれないようの論評もあります。開胸肺精査というのは患者に身体的ばかりでなく心理的負担、そして生命の危機さえを強いるものだけにどうしても消極的になりやすいものです。ただ、しっかりした診断が重要なことは疑いもないわけで、そういう場合に、開胸肺精査となれば、この臨床家(呼吸器科)・放射線科医、病理医に加え、胸部外科医や麻酔科医の協力も必要となるわけです。




ATS/ERS委員会で、特発性間質性肺炎の再分類がなされた
新分類
組織診断:臨床-レントゲン的-病理診断

by internalmedicine | 2004-11-24 21:52 | 呼吸器系  

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