慢性吐気・嘔吐: 慢性前庭機能障害の可能性を考慮すべき ;Fukuda stepping examination

この報告の主題は2つ
・ 胃内容排泄試験がプロトコール通りなされてない現状
・ 原因不明な機能的異常とされたなかに、慢性前庭神経機能障害例が多く含まれる



Evans T, et al "Chronic vestibular dysfunction: an unappreciated cause of chronic nausea and vomiting" ACG 2011; Abstract 7.
情報ソース:http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/ACG/29387#ayk

Chronic vestibular dysfunctionは原因不明の慢性の吐気・嘔吐の原因として一般に考慮されがたい原因であるが、Evansらは、248連続患者で、1ヶ月以上続く上記症状患者を検討
患者の81%は女性で、年齢中央値42、症状持続中央値24ヶ月
胃手術既往11.6%

248名の内156名が胃腸症疑いの診断。
102はgastric emptying testが行われたが、95名がhour-hour international protocol外施行
推奨時間より短く2時間未満で、プロトコール逸脱は他にも試験食物の代用など
36名繰り返し試験し、27名が正常結果

結局最終診断としての胃腸症は11.3%だけ
他の診断は、cyclical vomiting syndrome (8.8%)、 rumination syndrome (1.2%)、 postsurgical syndromes (2.0%)、 medication-induced vomiting (1.2%)、 GERD (2.4%)、 他非特異的原因 (47.3%)



最も多い特異的診断は、chronic vestibular dysfunctionで、 "nystagmusの存在、Romberg test異常、あるいはFukuda stepping examination異常”などで診断

(Fukuda stepping examination:the patient is asked to march in place for one minute with his or her eyes closed and ears covered. A turning of greater than 90 degrees during the test is considered an abnormal result.;その場足踏み1分で、90度以上の回ったら陽性ということ; 参照


この疾患のための検査陽性例では、経皮スコポラミン and/or meclizine使用され、39名が5ヶ月中央値間使用、2/3が改善。糖尿病との合併27.2%がめだつ( 27.2% v 20% P=0.27)

前庭機能障害 6例、 内耳障害 8例

故に、慢性の原因不明の吐き気・嘔吐患者では、慢性前庭機能障害は考慮されるべき。
さらに、胃排出試験の施行のいい加減な施行方法がこの会で問題になったようだ。


日本では、”胃排出試験”は一般的に行われてないと思う。このかわり、上部消化管内視鏡検査・腹部超音波検査などが行われ、機能的な疾患と見なされ、製薬会社のパンフレットを鵜呑みにした医療がなされてるのではないか?

Fukuda stepping examination
http://www.youtube.com/watch?v=atXCNq_CgHk

Romberg Test
http://www.youtube.com/watch?v=VzjIi8YlNCg

上記胃内容排泄試験は、アセトアミノフェン試験とは違うようだ・・・
http://www.medicinenet.com/gastric_emptying_study/article.htm#3howis

消化管機能検査っておざなりになってるのかもしれない。おざなりの臨床的把握と機能的薬剤の盲目的使用の可能性・・・これもまた、日本の医療の恥部の一つかもしれない。

by internalmedicine | 2011-11-02 09:41 | 消化器  

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