インフルエンザにうがいは有効か? というより安全性も考えて使うべき

毎年この時期になると出てくる話題だとおもいます。

有効性を示唆する論文・臨床的な検討はあるが、検討数、研究数として少なく、“出版バイアス”が否定できるほどの対象数がないということで、うやむや・・・医者は悶々?・・・・日本だけでなされていることはいつもエビデンスのなさに泣かされますね。判断しようもないことが多い。

大金をかけて製薬会社が大規模トライアルをするとも思えないので、今後もだれも動きそうにない。こういうことこそ医者主導、医師会主導ですべきなのだが、この活動の原資はどこから?本来なら国ですべきでしょう。


“インフルエンザ予防に対するうがい”への私の考え:
もともと安い薬剤であり、
harm”が少ないという前提なら
目くじら立てるほどのバイアスがかかっているとは思えないbenefitのエビデンスはあると判断
しかし、“harm”の注意喚起は必要と考える。

と考えます。

しかし、どうやら“harm”はないと単純には言えないようです。

具体的”harm”の問題を 自己判断で抜き書きします
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・禁忌はヨード過敏症
パッチテストを行い、陽性例が認められているが、陽性率は低い。
・慎重投与が甲状腺機能
妊娠中及び授乳中の婦人へのヨードホール製剤の使用に関連した先天性甲状腺機能低下症の乳児の報告
新生児への塗布による甲状腺機能低下症報告
熱傷創面および体腔に投与された場合に、著明な一過性の甲状腺機能低下症の危険性
・創傷治癒遷延?
術前・後の消毒に用いて白血球遊走の阻害の報告
http://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/medical_supplies/data/k007/

いづれの副作用の頻度・重症度に関しての情報が少ないという問題点もある。
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MRがくれば聞くつもりですが・・・明示すべきですよね。>明治製菓

【私が確認したいところ】
・うがいをしたときのヨウ素の血中濃度はどの程度なのか?添付文書には記載がありません。
・“臨床的にイソジンうがいでどの程度甲状腺への影響(妊娠・授乳中を含め)があったのか?”
・“甲状腺疾患治療中の副作用発現事象についての詳細報告は?”
・“ヨード過剰摂取による可逆性甲状腺機能低下症”の頻度はどの程度の使用であり得るのか?
・扁桃炎や咽頭炎で粘膜びらんが激しい場合、創傷治癒的な考えでいけば、治癒遷延化の可能性もあるが、実際的にはそういう現象は起こりえるものなのか?


“無機ヨードは容易に消化管より吸収され,その大部分は尿中に排泄される.尿中排泄量は欧米人では150~500μg/日であるが,日本人は魚類や海藻類を多食するため1,000μg/日以上になることも珍しくない。・・・・・過剰摂取でも甲状腺腫が発生することが北海道の例である.患者は対照者の15倍の尿中排泄量があり,ヨード制限食で甲状腺腫も回復したという.”(今日の治療指針2001年:参考)


イソジン1mL中:ポビドンヨード70mg(有効ヨウ素として7mg)で、うがい1回2-4mlを推奨してますので、諸外国の人が1日に口にする量の数倍~10数倍のヨードが、うがいを通して体を出入りしている事になります。とてもこの点が心配になります。気づかないで飲み込んだり、あるいは付着したものが希釈されて胃や腸に流れ込む・・・(すこし大げさかぁ・・・)
この対策のためには、うがい液を洗い流すため結果的に水でうがいを繰り返さなければならない事になります。

関連して
PVPIはうがいでも有意にヨード吸収が有り、血中総ヨード、無機ヨードの増加が認められる。
Effect of mouth rinsing with two polyvinylpyrrolidone-iodine mixtures on iodine absorption and thyroid function.
J Clin Endocrinol Metab. 1988 Mar;66(3):632-5.
という事実があります。
 ↑
かなり、問題なのでは・・・うがいによる血中ヨード増加は看過できない問題のようです。

インフルエンザ予防のためイソジンでうがいするかどうかは、単にうがいがインフルエンザ予防に役立つかどうかだけでなく、血液中のヨードをあげる可能性まで考えて行ってください。


―――――――――――(以下:参考資料)―――――――――――――
【インフルエンザはお茶のうがいで予防?】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=9455060&dopt=Citation

批判
http://www.asahi-net.or.jp/~kr2m-nti/wound/wound146.htm

【夏井先生のサイト】
http://www.asahi-net.or.jp/~kr2m-nti/wound/bbs4.htm#082
http://www.asahi-net.or.jp/~kr2m-nti/wound/bbs6.htm#133
http://www.asahi-net.or.jp/~kr2m-nti/wound/next/bbs12.htm#301



【(一部で?)有名な前向き研究】
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試験管内じゃない有効性の検討:
Evaluation of the bactericidal activity of povidone-iodine and commercially available gargle preparations
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12011519&dopt=Abstract
Dermatology. 2002;204 Suppl 1:37-41.
in vitroでPVP-Iの殺菌活性、CHG(chlorhexidine gluconate)、CPC (cetylpiridium chloride gargles)を比較。in vivoでも比較。
30秒後PVP-Iはすべての種類を殺菌、うがい後の平均細菌数減少率はPVP-Iで99.4%、CHGで59.7%、CPCで97.0%。うがい後の味、感覚、においという面で評価が高かった。他の薬剤によるうがいに比べて学校では感冒とインフルエンザによる欠席率が有意に減少。

:批判→着色された水やにおいなどを擬せてない、不十分なプラセボで検討されてないため、今一つ確立したと言えなくなってしまう。
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【気管内挿管前のうがい効果】
Gargling with povidone-iodine reduces the transport of bacteria during oral intubation: [Le gargarisme avec un melange de povidone-iode reduit le transport bacterien pendant l'intubation orale].
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15525622
Can J Anaesth. 2004 Nov;51(9):932-6.

経口挿管前に水によるうがいとPVP-Iによるうがいを施行、PVP-Iによるうがい後の方がMRSAの喉頭部のコロナリゼーションは少ない。

 批判:上記論文と同様なことが言えるが、これは臨床的効果の検討ではなく、細菌叢の変化を見ているに過ぎないという批判もできる
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【AIDS患者の予防効果】
エイズ患者の薬剤耐性カンジダ口腔内感染症に関してポビドンヨードは予防的に有効
http://www.aegis.com/conferences/13wac/MoPeB2281.html

 批判:カンジダには確かに有効かもしれない、免疫抑制状態患者では確かに有効かもしれない。しかし、健常状態に有効というエビデンスではない。
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by internalmedicine | 2004-12-06 12:39 | 呼吸器系  

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