あるある大辞典:炭水化物(Atkins)ダイエット礼賛番組

あるある大辞典というのはほんとに困った番組です。

まだまだ、医学的には結論がでておらず、糖尿病や腎臓疾患、心臓血管疾患患者にとっては注意すべき内容も含むのに、なんらこのadverse effectにはふれず、数少ない対照の取れてない番組内実験であたかも確信のなる事実のごとく、VLCD(very low calorie diets )、いわゆるAtkinsダイエット 礼賛番組を作っています。

いつまで、こういうことをつづけるのでしょうか?公的電波を利用している公共性の高い放送局がこのような番組作りをつづけるのは解せません。

この番組は“マイナスイオン”礼賛のきっかけを作ったとわたしは思っております。擬似科学の巣窟というだけではなく、より実害のある健康を害する番組と思います。健康を害する報道を垂れ流す放送局は放送免許更新に関しては厳重に処分すべきではないかとおもうのですが・・・


重度の肥満における低炭水化物食と低脂肪食との比較
http://www.so-net.ne.jp/medipro/nankodo/xforeign/nejm/abstracts/contents.cgi?348-21-2074.data
N Engl J Med 2003; 348 : 2074 - 81


肥満に対する低炭水化物食の無作為研究
http://www.so-net.ne.jp/medipro/nankodo/xforeign/nejm/abstracts/contents.cgi?348-21-2082.data
N Engl J Med 2003; 348 : 2082 - 90


これらの原本にはいづれも以下の注意がかかれてます。
“・・・注意深い解釈が必要である、全体的に体重の減少は少なく、極端な肥満患者でグループ間の違いがあり(均質な効果はなく)、短期的研究である。炭水化物制限ダイエットを実行する前に、今後長期的な心臓血管系のアウトカムの評価が必要である・・”



Lancet(Lancet. 2004 Sep 4;364(9437):897-9.)から・・・
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1)体重減少の比率はかなり少ない
2)研究対象者が尋常な肥満ではなかった
3)断念率が異常に高い
4)腎臓に対してかなり危険だが、副作用の検討がなされてない
5)飽和脂肪酸の過剰摂取の心臓への影響に関して検討がなされてない
6)短期的研究で1年後は体重がもとにもどるので、よい効果であるはずがない
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Atkins diet bookが4500万冊40年間にうれ、Atkins食は人気となった。炭水化物を1日30gいかに制限すれば、油いっぱいの肉、バター、ほかの高脂質食事をとっても体重減少には効果があるというものである。低炭水化物食は一時的な流行食と考えられていたが、最近の研究ではこの考え方に疑問が生じている。

【スターティング・ポイント】
低炭水化物食のシステム・レビューでは体重減少はダイエットのその食事の期間・エネルギー摂取制限と関連があり、炭水化物の制限とは関連がなかった。
比較的長期的ランダム化試験では、低炭水化物減量食と低脂肪カロリー減量食を比較。
(N Engl J Med 2003; 348: 2082-90(http://www.so-net.ne.jp/medipro/nankodo/xforeign/nejm/abstracts/contents.cgi?348-21-2082.data); Ann Intern Med 2004; 140: 778-85(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15148064))。
両トライアルとも低炭水化物減量食が6ヵ月後は体重減少がみられたが、12ヵ月後は差がない。

【次は何をすべきか】
高脂質食のアドリブ摂取が体重を減少させるのは
結合水 産生増加させ
食欲減退を生じる食事中のケトン産生性の特徴
高蛋白含有は食欲をみたし、自発的な食事摂取減少を生じ
食事選択の制限により結果的にエネルギー摂取減少を生じるためだと考えれる。

低炭水化物食間の栄養状態と体組成の変化を測定するための、空腹時、食後の心臓血管リスク要因・副作用の評価をするための長期的研究が必要。

以上の研究がなければ、低炭水化物食は勧められない。
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これらのVLCDの検討で、いままでの栄養指導に対する反省点がふくまれることはたしかです。カロリーとバランスを重視して、脂肪食のメリット、食欲に対する影響が無視されていたことは反省すべきだと思います。


日本の栄養学は概念のおしきせで、みずからエビデンスを生もうとする気概がない。時折みうける研究はスポッティーであり、システミック・リサーチを行おうとするものでない。となると、諸外国のエビデンスの紹介にすぎない。時折、今回のようなお笑いを生んでしまう。

たとえば、ほかに、エンプティーカロリーのような馬鹿なことをいう栄養学の教授や新聞社が存在します。
本来“Alcohol is often referred to as a source of 'empty calories', meaning it has no nutritive value other than providing energy”ということで、“アルコールは栄養上空っぽのエネルギーである”という意味なんですが・・・アルコールにカリーがないということではありません。
(日経とBBCのレベルの違いも・・・対比事項です)

生活習慣という面で、運動と食事は2本柱でとても重要なのですが、残念ながら、かなりレベルの低い放送のたれながしで心もとない限りです。

by internalmedicine | 2005-01-09 22:44 | Quack  

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