なぜ大企業はサプリメントに手をだすのか?


なぜ大企業はサプリメントに手をだすのか?


米国のNCI(National Cancer Institue)は、通常の治療法と違い、“補完的・代替的治療は信頼性を有する会社でカバーされてないことが多い。患者はその供給会社の信頼性を見極めることが大切” とのべてます。


現在サプリメントを盛んに薬品会社・非薬品会社とも大売り出ししてます。


宣伝文句としては“FDA認可”なのですが、FDAは、薬剤としてではなくサプリメント食品と認可してます。その意味は“特異な有害性がないなら、市場に出す前にサプリメントとして許可するという意味合い”です。


効果を見いだしたから“FDA認可”というわけではないのです。米国政府に対する無条件な信頼性が日本国民にはあるのでしょうか?日本政府・厚労省には落胆することが多いので、外国政府を信頼する雰囲気でもあるか、なによりFDAという難しげな権威有りそうなもので信頼性を確保しようと言うわけです。これは、“消防局の方からきました”という詐欺に似た文言ということは理解してほしいのです。


もう一つの問題点は、製品の均質性の問題点です。この点で消費者は不安が残るのです。同一成分をたもつこと、その質を常に一定に保つためには当然それなりの投資や技術、原材料確保が必要となる訳です。名の売れた大企業はそんなに悪いことはしないだろうという消費者の自己防衛本能もあり、名の通った企業に頼ることとなるわけです。

会社側としても、サプリメントへ流入してくる理由はそのネームバリューを利用しているわけです。


アルコール関連の一流企業が生産するSesaminは典型的で“肝障害への予防的効果、特に抗酸化活性によるものと推定。しかし心血管系疾患へのbiologicalな活性に関してはあまり知られてない”とレビューに書かれているのにかかわらず、国立大学教授のインタビュー記事に使い、印象操作がなされてます。


マイナスイオン酸素療法に手を出している松下電器も、少数・短期間の治験で、有効性が見出されたとメディアを総動員しております。"マイナスイオン”を売り物にしていたエアコンなどはどこに消えたのでしょう。こんどはナノ粒子なるもの・・・


疑似科学商品を批判するときの戦略

1)有害性の指摘

2)有益性の証拠の欠如の指摘

の2点です。


(2)の有益性の根拠の欠如の指摘は非常に難しいのです。業者としては証拠として、短期的動物実験や試験管内の結果を提示してきます。動物実験系というのはさまざまでなにかひとつでも有益性があれば、それがby-standerの影響であっても、業者は宣伝に持ってきます。

最終的には人間に対する疫学的な証拠となるのですが、それがでるまで、20-40年などの期間が必要となります。10年売れ続ければ商品としては成功です。

最近、抗酸化ビタミンの副作用の報告がつづいています。これは偶然でなくタイミングとして、この"抗酸化ビタミン・神話・机上の空論”の崩壊がはじまっていると私はみています。


マイナスイオン批判は比較的簡単です。なぜなら40年以上前に米国で問題となった原型があったからです。そしてGINAという喘息のガイドラインにしっかり有害性が書かれていたのですから。

しかしながら、マイナスイオンを付加価値として生産販売してきた電機メーカーからはそれに対する警告・注意はなく、自然消滅を図っているのです。行政から警告・指導のあった形跡もありません。


企業としては、商品の裾野をひろげ、足腰を強くしようとするのは当然です。でうから多方面の事業展開は当然なのでしょう。生き残りをかけた戦争だからです。

ただ、企業の倫理性というのは、自動車産業や乳製品産業だけでなく、健康を名とする商品を扱う業者にもっとも重要な要素です。足元をすくうことも多いのです。安易な健康商品の導入は、5-10年だけを商品寿命と考えるのであれば、成功なのですが、企業の信頼性を崩壊するきっかけになりかねません。慎重な事業展開を望むものです。




by internalmedicine | 2005-01-12 09:58 | Quack  

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