インターンの労働シフトと交通事故

インターンの労働シフトと交通事故

Extended Work Shifts and the Risk of Motor Vehicle Crashes among Interns
http://content.nejm.org/cgi/content/short/352/2/125
NEJM Volume 352:125-134 January 13, 2005 Number 2
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extended work shift後の、交通事故と事故ニアミスインシデントのオッズ比は、extended durationでない勤務シフト時と比較して、2.3(95%CI 1.6-3.3)、5.9(95%CI 5.4-6.3)
前向き分析で、すべてextended work shiftでは月ごとの交通事故リスクは9.1%(95%CI 3.4-14.7%)増加、仕事からの帰宅時の月のリスクは16.2%(95%CI 7.8-24.7%)増加。

月に5回以上のextended shiftのインターンでは、運転中睡眠や交通時ストップすることが有意に高い(odds ratio 2.39(95%CI 2.31-2.46)、3.69(95%CI 3.60-3.77)
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一般的には8時間シフトから10時間シフトの影響は無いとされてます。
http://www.cdc.gov/niosh/docs/2004-143/
“8時間と12時間シフトの相違の明確なステートメントを多く行うことは困難。なぜなら、仕事のスケジュールのタイプの不一致性によって判断できないから”

インターンという職種では交通事故増加が関連あった。大学にいて研修医を指導したときに、こういう事例をみています。当直あけで居眠り事故の物損でしたが、この当時は、研修医の勤務状況は社会的問題にはなってなかったのです。

NEJMはインターンとなってますが、日本では昨年から研修医新制度が始まり、時間外労働の制約がなされ、むしろ指導医の方が面食らってしまっていると聞きます。カンファレンスなどは勤務時間内にしないとおとがめがある。結局、自分の貴重な診療時間をなげうって、カンファレンスを時間内に行い、診療の続きは時間外へと・・・
そして肝心の研修医はQOMLとやらを追求し、きつい・汚い?労働をさける動きがある。

日本の当直医業務というのがこの勤務シフト以上に勤務医に悪影響を与えていると考えます。なにせ、点滴が抜けたからと病棟から呼ばれ、救急がきたから外来によばれ、ほとんど眠る暇ないのに、次の日は外来を数十名診るという状況。これじゃ医療の質も保てないし、自分たちの体も持たない。せめて当直あけは半日にしてくれと院長・経営側に要望したのですが、却下。造反して内科チームだけ・・・こっそり造反したことがあります。
以前、一人医長をしたことがありますが、そのときはもっと悲惨で、当直医はもちろんいるのですが、ちょっとしたことでも看護師から問い合わせ有り、1日平均20回ほどポケベルで呼ばれるわけです。午前2時から3時に「指示通り薬剤を投与して良いですか?」という問い合わせまでつきあわないといけない状況で、その病院に勤めて市外にでたのは1回だけで、それも他科の後輩の医師に頼み込んで、専門医の更新に出向いたことくらいです。それでも、他の病院に比べれば、比較的待遇の良い病院でした。
東北の村の実質一人院長が“勘弁してくれ”といったのはこういう理由だったのではないかと同業者として同情するわけです。現在一線の臨床医師たちはこういう経験をしているはずです。

医師の労働条件の改善をしなければ、若い医師たちは、医療の下支えとなるきつい医療を忌避していき、少数しか医師が残らず、医療の質は保てないのです。
役人たちはおそらく何も考えてないし、メディアは無視。

Effect of Reducing Interns' Work Hours on Serious Medical Errors in Intensive Care Units
NEJM Volume 351:1838-1848 October 28, 2004 Number 18
http://content.nejm.org/cgi/content/short/351/18/1838

日本の医者たちは低報酬のため破滅へ突き進んでいる
http://intmed.exblog.jp/970899/

by internalmedicine | 2005-01-13 10:20 | 医療一般  

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