花粉症に対する筋肉注射に関する考察:"difficult asthma"に対するステロイド筋注の論文から・・・


花粉症の時に問題となるのは、花粉症に対するステロイド注射の事です。

なぜ、注射をする医者が少ないか・・・それは問題点を知っている医者が大多数だからです。
慎重な使用を心がけるべきだと思います。花粉症単独ではは生命に関わることはきわめてまれです。副作用が全くない薬剤なら問題ないと思いますが、ゆゆしき副作用のある薬剤だから問題なのです。

さて、“difficult asthma”すなわち、通常の治療で困難な事例に、ステロイド懸濁の筋肉注射(triamcinolone acetonide:TA)が、有効かを問うた論文
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difficult asthmaの小児に対してtriamcinolone acetonide筋肉注射施行
後顧的レビュー
Pediatric Pulmonology Published Online: 21 Jan 2005
治療期間・フォローアップ期間の重症マーカーを治療前と比較(paired t-test)
単回投与の5名の子供(5-13歳)と多数回投与の8名の子供(12-15歳)
多数回投与(n=3-5)では、治療期間・フォローアップ期間とも、喘息急性悪化の回数は減少(P<0.01)で入院回数も減少(P<0.01)
単回投与は悪化を減少する(P<0.05)が、入院は減らさず

triamcinolone筋注はdifficult asthmaに有用な短期治療法
その有効性は経口ステロイドとの比較においてコンプライアンスの改善、抗炎症効果の改善故であるか未だ不明
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とても危険な論文だと思われ、副作用、特にHPA(視床下部・下垂体・副腎)軸への影響や白内障などの眼科的分野の副作用記載がありません。ただし、この事例は喘息そのものが生命に関わるから使用が許されているわけです。かなりの重症患者で、コンプライアンスの非常に悪い患者とか特殊事情にて通常治療困難な事例が適応と考えられます。

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TA筋注を3ヶ月から3年使用した5例。HPA軸の機能をメチラポンでテストし、投与期間中と投与後10ヶ月の副腎抑制。レンズ透過性が5例中2名低下。
故にTA筋注患者ではストレス時のコルチコステロイド投与を考慮すべきで、眼科検診3ヶ月から6ヶ月毎おこなうべき
Arch Dermatol. 1975 Dec;111(12):1585-7.

Assessment of adrenocortical function in asthmatic patients on long-term triamcinolone acetonide treatment. Ann Allergy
42,41-43, 1979

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副腎不全などHPA軸低下が生じていると知らない場合特に外傷・手術などのストレス時に生命の危機に陥る可能性があります。

Informedがなされているか・・・きわめて疑問です。たとえば、眼科チェックを定期的に受けなさいとか・・・手術時はTA筋注を受けたことを告げなさいとか知らされているかどうかの問題です。

by internalmedicine | 2005-02-24 23:56 | 呼吸器系  

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