PSAからみた検診・人間ドック

どの検診にもつながるのですが、検診のカットオフ値の検討がなければその検診の意義なんて不明です。日本で行われているほとんどすべての検診・人間ドックはこの基礎的検討はなされていたとしても、説明責任はほとんどなされていません。脳ドック学会に以前かみついたことがありますが、あの元論文はとんでもないメタアナリシスでした。

検診・人間ドックを受けた人は、この検査でどの病気に対して、どれだけ特定の病気を発見できるか、そして異常値発見の時どれだけ見逃しがあるかという説明を聞いたことがあるでしょうか?具体的にはどの程度の発見率であるか、その異常値のときに間違いの検査値である率はどれだけという説明をうけたことがあるでしょうか?

たくさん検査で引っかければいいじゃないかというかたもいるかもしれませんが、その場合は、そのために検査値異常者を多く生み出し、検査に伴う合併症や時間・金銭的損失につながります。
逆に見逃し確率はかならずあります。人間ドックを受けたから大丈夫だ、ちょっとした血尿や血痰、血便があってもこの前ドックを受けたから・・・というのはとんでもないのです。このための受診の遅れ、検査の遅れというのはたくさんあります。


現状では人間ドックや検診ではその説明義務はあまりうるさく言われてません。放射線被曝の問題に関してはある程度の説明の準備はなされてはいますが、そのほかの検査ではどうでしょう。C型肝炎検診では、肝機能異常がないにもかかわらず、無症候性C型肝炎ウィルス感染者をいっぱい発掘しました。とこが、この人たちへの診療に関する保険上の取り扱いは曖昧なままです。この国の検診行政というのはほとんど体をなしておりません。リスク層別化をしないで、肺癌検診と名付けて非喫煙者・低リスク者に胸部レントゲン写真を継続、結核検診につながるから(この検診の費用効果などの検討論文は存在しない、結核集団発生がアルト困るからという理由、同じ理由なら他の病気の機関もつくれといいたくなりますね、O157、MRSAなどと・・・))などといういいわけで天下り機関を残存させている行政・・・


PSA検診の否定的見解に関してはずいぶん前から話題になっていて、

このBlogでも言及しております
 ↓
前立腺癌の検診でつかわれているPSAは見逃しが多い:http://intmed.exblog.jp/337898/


あらためて、より信頼性のある形でJAMAで発表されたものです。
元論文→http://jama.ama-assn.org/cgi/content/short/294/1/66




読売新聞( 7月6日)では
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【ワシントン=笹沢教一】前立腺がんの早期発見や悪性度の把握に役立つとして日本でも普及している前立腺特異抗原(PSA)検査値について、全米男性約2万人に対する疫学調査を行った米テキサス大などの研究チームが「がん発見の効果的な目安にはならない」との結果をまとめた。 PSAは、血液1ミリ・リットル当たりのナノ・グラム数が「4以下」で正常とされるが、同チームは「この線引きに有効性はない」としている。 (後略)(読売新聞) - 7月6日15時7分更新
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外国のメディアは、“前立腺癌リスクのPSAは特異的な値は直結せず”と表題
(ScienceDaily)
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JAMAにてすべての値で連続したリスク表示というしかない、感度・特異度とも満たす特定のPSA値は見られないとDr. Ian M. Thompson,らは述べた。
前立腺癌予防トライアルプラセボ群8575名のデータ解析であり、3.0を超えず、正常の直腸診結果を有する人々である。このうち、5587名(65.7%)が7年フォローアップで少なくとも1回は前立腺生倹を受けている。この生倹患者の内1225(21.9%)が前立腺癌と診断された。
カットオフ値を1.1→4.1ng/mLとあげると
感度:83.4%→20.5%
特異度:38.9%→93.8%
と変化する。
感度特異度とも両方みたすカットオフ値はない。
老人よりより70才未満の方がPSA検診として有用性が高い。

この結果から、PSAでの明確な生倹必要性を問うカットオフ値はない、そして、病歴や他の評価と結びつけて検討しなければならないだろうと検討者はのべている。
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PSAが全く当てにならないのではなく、病歴などの臨床背景無視の評価に問題があるのです。それが新聞社・行政、利用者、医師の一部もわかってない。

最近、ヘリコバクター・ピロリの尿検査を職場検診で取り入れたところがありました。これって、比較的高齢者の多い職場なので、陽性者も多いと思うのですが、どうするつもりなのでしょう。
陽性率が8割以上と想定され、また内視鏡など胃病変特定されていない場合治療法が保険適応でなく、重大な副作用として偽膜性大腸炎、軽微な副作用は比較的多く、下痢など半数にみられます。そういう説明はなされずに行われたと聞いてます。

検診や人間ドックはよりロジカルに行われるべき・・・

by internalmedicine | 2005-07-07 09:25 | 医療一般  

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