とんでもガイドライン:漢方薬治療における医薬品の適正な使用法ガイドライン

日本呼吸器病学会から別の薬剤適正使用ガイドラインが発表になってます。
http://www.jrs.or.jp/quicklink/glsm/guideline/disease/index.html


そのうちの漢方薬治療における医薬品の適正な使用法ガイドラインをみてびっくりする記載が多いことの・・・愕然としました。
http://www.jrs.or.jp/quicklink/glsm/guideline/pdf/disease03.pdf


<引用開始>─────────────────────────────────
"EBM という概念は、西洋医学の中でもきわめて最近提示され、速やかに全世界的に普及しつつある概念である。これを''単に根拠に基づいた医療というならば、あらゆる医療は元々何らかの根拠に基づくことが想定されているはずで、今さら目新しい概念ではない。"
─────────────────────────────────<引用終了>
という文章に始まってます。Sackettらの著作物をみても彼ら自身、目新しい概念とは言っておりません。なによりも“弁証”的証拠と隔絶した形の実地的な治験の集合体を“エビデンス”として実地臨床に役立てようとするものがEBMの考えです。


EBMとは、外的証拠の序列化、その頂上がランダム化試験の組合せであるシステミック・レビューやメタ・アナリシスである。最底辺が権威付けされた専門医の意見や個別の臨床的な経験なのである。このガイドラインの作者たちは曲解し、漢方の漢方医学的疾患概念「証」にねじ曲げようとして、本来の概念を理解しようともしてない記述が頻出しています。


<引用開始>─────────────────────────────────
“西洋医学のEBM:ところで、話をいったん西洋医学に戻して、アスピリンについて考えてみたい。言うまでもなくアスピリンは代表的な解熱鎮痛剤である。では、アスピリンの解熱鎮痛作用について、大規模な二重盲検ランダム化比較試験というものは存在するだろうか。これと同様に、表1 に挙げた薬剤はどれも、いわゆるEBMが求める「高いレベルのエビデンス」を有する臨床研究が存在しないか、あるいはそうしたデータが世に出る遙か以前から世界中で使われていたものである。しかもこれらの薬物は、西洋薬学において基本中の基本、日々臨床において最も信頼され、全世界の医師が自家薬籠中のものとして用いているものばかりである。こうした薬物の“根拠”について、どう考えるべきなのだろうか。”
─────────────────────────────────<引用終了>


アスピリンのシステムレビューには以下のごときものがあります。

Oral aspirin in postoperative pain: a quantitative systematic review
Pain 81 (1999) 289–297
http://www.jr2.ox.ac.uk/bandolier/painres/download/176ASA.pdf


特に 以下の図表は対照偽薬がなければかけません。
a0007242_16592479.jpg




これをふくめ以下の薬物:薬効がやり玉にあがってます。
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アセチルサリチル酸(アスピリン) :解熱鎮痛作用
フロセミド:利尿作用
ジギタリス:強心作用
モルヒネ:鎮痛作用
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著者がEBMをわかってないかがよくわかります。薬物の適応・作用機序ををエビデンスというのではなく、EBMというのは臨床実地的に、いかに投与された患者さんの方に利点があるかを指し示すのがエビデンスです。ですから、検討すべきは、プラセボなどに比べて、アスピリンがたとえば癌疼痛効果があるかどうか、フロセミドやジギタリスがたとえば心不全の予後や入院率、NYHAなどの症状スコアを改善するのか、モルヒネに関してはNSAIDsに対して疼痛スケールを改善するのかということのエビデンスを求めることがEBMの作法です。

Aggressive Diuresis for Severe Heart Failure in the Elderly(Chest. 2001;119:807-810.)や、"Digitalis for Treatment of Congestive Heart Failure in Patients in Sinus Rhythm (AFP)"(http://www.aafp.org/afp/20040101/cochrane.html)を読めばエビデンスがないなんていえないわけで、

確立している薬剤を否定するためにプラセボ治験をすることは倫理的にも問題があります。通常の鎮痛剤に効果がない癌患者に対してモルヒネとプラセボ対照と比較試験を行うことは問題があります。やろうとしてできない治験なのです。ところが、漢方のプラセボ治験はやろうとしない治験です。より難しいと思われる、鍼治療(acupuncture)の治験はsham-placeboなどで行われております。

やろうとせず、ぐだぐだ言い訳ばかりをしているのが漢方のEBMです。

<引用開始>─────────────────────────────────
"2002 年、日本東洋医学会では我が国における漢方治療の臨床データを検証し、領域毎にEBM の見地から再評価を行った。その結果は同学会から「2002 年中間報告・漢方治療におけるEBM」として出版されている。このうち呼吸器分野においては10 症例以上を対象とした臨床研究35 報が収集され、''二重盲検ランダム化比較試験が1 報''、比較試験が26 報収録されている。"
─────────────────────────────────<引用終了>

結局、ガイドラインに必須と思われる皆無に等しきランダムトライアルをベースに欠かざる得なかった筆者たちの気持ちもわかるが・・・・害悪でしかないガイドラインなのでは・・・



実に情けないガイドラインと感想。

by internalmedicine | 2005-07-07 17:03 | 呼吸器系  

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