朝日新聞に見られるアスベスト中皮腫報道のいい加減さ

世間では朝日新聞の記者が、取材をせずに、捏造記事を作り上げたとのことが話題になっているが、私ども医者から見れば、以前から、新聞記事なんてほとんど、嘘ばっかり・・・かれらに、科学的良心があるのか検定をおこないたいくらいだ・・・

以前、10週類も薬を元気な患者に出しているなどと、取材もせずに印象だけで世論欄を書いていることを批判した。現実を無視して批評だけに終始し、机上の空論だけで世を惑わし続ける・・・それを信用する読者が一番問題なのだろうが、彼らを決して優秀な指導者などと思ってはならない。

さて、アスベストという・・・今、かなりナーバスな問題を朝日新聞がその偏向的な観点から、科学的常識を無視して記事にしている。これにより、また、朝日により、世の読者、為政者さえだまされてつづけるのだろうか。・・・・決してこういうことは放置していてはならないと思う。


では、本題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


問題の工場からの距離から中皮腫死亡率が通常より高いため、「まだ最終結果ではないが、中皮腫の原因がクボタだと疑うには十分なデータだ」との報道がなされている
“半径500m内、中皮腫死亡率は9.5倍 クボタ旧工場”(朝日新聞:http://www.asahi.com/special/asbestos/OSK200508270059.html

朝日新聞の記事なので、証拠能力が低い(といっても他の新聞も一緒だろうが・・・)と思われる。そして、疫学的な手法にしてはかなり乱暴な気がする。

“クボタが毒性の強い青石綿を使っていた時期(57~75年)に注目し、この間、クボタから半径1キロ以内には延べ6万人、500メートル以内には1万5000人が居住していたなどと推計。中皮腫の発症まで30年前後とされることから、死亡者36人のうち00年以降に亡くなった22人について、人口比の中皮腫死亡率を算出した。

 その結果、年間14万人に1人(03年度)とされる全国平均と比べ、500メートル以内では9.5倍、500メートル~1キロでは4.7倍、1~1.5キロでは2.2倍にのぼることがわかったという。 ”

この文面統計学的に意味のある事なのであろうか? ちょっと計算してみた。

情報源が産業疫学の専門家だろうから、間違いないはずなのだが・・・


<目的>
500メートル以内の住人が9.5倍というのがはたして本当に統計学的に意味があることなの
<手順>
これは、14万人に1人ということで、ポワソン分布に従うと仮定する
(参考:http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Bunpu/poisson.html


1年のあいだにある人が中皮腫に成る確率 p はきわめて小さい。

p = / 140000

 また,この対象とする人口は大きいので,確率はポアソン分布に従うと考えられる

 ポアソン分布のパラメータ λ は,

λ = n p =15000×( 1 / 140000 )×9.5=1.0178

となる。

 (http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Bunpu/poisson.htmlの( 1 ))式より,求める確率は f ( 0 ) = 0.3613839597 となる

簡単に言えば、10回くじをひけばあたりが3-4回でる確率・・・これでは、これが偶然にというより、さほどまれならず生じる確率だといえる程度のものである。これくらいの頻度で間違って関連があるよと結論づけられることがありますということ・・・>これが天下の朝日新聞の記者は理解ができないらしい。


これがポアソン分布に従い、蓋然性が5%未満である確率となるときは、λ=3のとき、28名以上の患者発生、すなわち、全国のほぼ28倍以上のなら統計学的に有意差であると証明ができたのだが、この場合は5%の有意差を持ってすれば、差がないという帰無仮説は棄却できない。


統計学的には意味のない記事であるにもかかわらず、それを朝日は9.5倍も・・・と確たる事実かの如く、記事にしているのである。


統計の専門家が述べているとのことだが、この専門家のレベルが相当低いか、もしくは、取材源を理解せず、あるいは、理解しようとせず、く有意差検定などの話を無視して、結果だけを仰々しく、センセーショナリズムとともに吠え立てるのではないか。

おそらく私たちのマスコミとの接触の経験だと後者が正しい。9.5倍という事実とそれが正しい(あるいは誤りである)確率の問題は別であるということを、おそらく高学歴であるが、統計学を知らない・無視する記者は比率や倍率だけを報道するということを知っている(細木数子が売らないが統計学だといいながら統計学の用語を全く使わないどころか、概念自体を理解してないのと同じレベルだろう)

新聞記事というのは所詮この程度のものなのだろう。・・・これを、読者は知らなければならない。


また、この疫学専門家は、この新聞記事が行政に利用されることを想定しているのであれば、どこか、批判を受ける場、学会などで、その研究方法などの批判を受けたうえで、この報道に関する弁明をしなければならないだろう。それが科学者としての責務と思われる。
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そもそも、中皮腫という診断に同一の診断基準がなされているのかという疑問が残る。
電顕レベルや組織化学的に診断したものと、プラークがあるから診断したもの、アスベスト吸入歴から診断したものなどばらつきがあるだろう。


現に被害の可能性があるのなら、国の責任としては、その蓋然性による損失分は保証する必要はあるだろう。しかし・・・過剰な報道は、被害者にとっても結果的にマイナスとなるであろう。
日本だけでなく国際的にもこの問題はもちあがっており、そのうち国際的なコンセンサスが得られるであろうから、日本だけが特異的なエビデンスということはありえないのであり、真実がどこにあるかは、報道でなく、科学的事実がそのベースとなる。

by internalmedicine | 2005-08-30 16:39 | 呼吸器系  

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