研修医の週労働時間減少の結果・・・



日本の医者は、特に勤務医は、当直というあいまいな勤務の元に、実質夜勤をさせられ、労働基準の実質違反を強いられてます。その上に、ところかまわず呼び出される主治医制度というのも、heavy rotation以上に医者の心的ストレスとしてボディー・ブローのように聞いてきます。
ところが、より高収入のメディア関係者から医者の高給を非難する声ばかりです。
勤務医以上に何かと非難される開業医は自分の勤務スタンスは構築できますが、労働基準のようなものがないため、勤務などは悲惨なものです。薬剤の発注業務、従業員の人事管理、設備・備品のメンテナンス、掃除など諸事・雑務をこなさければならない上に、返済の心配をしなければならない肉体的・精神的なタフさも必要です。

なら医者をやめろと2chばりに言われそうですが、ではほんとに週労働時間を無視して、医療サービス自体に影響が及ばないのか・・・すなわち医療事故などに繋がる余地がないのかということで、JAMAで不足ながら分析がなされてます。

4-5日に1回の夜勤はアルコール摂取中の状態のようなパフォーマンスしか示せない。
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Neurobehavioral Performance of Residents After Heavy Night Call vs After Alcohol Ingestion
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/294/9/1025
JAMA. 2005;294:1025-1033.
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医者は人間であり、赤ひげのような虚構の世界で、医者も人間だぁと叫んだ医者を批判するようなことは患者にとっても良いことではないのです。医者個人の問題より社会システムの問題なんです。ところが、だれもこれを声だかに発言しない。
政権をとりそうなどの党もこういうシステムは問題にせず、医療費削減がデフォルトの話。医師会よ・・・これ以上の医療サービスは人的・構造的に医者はできないとギブアップ宣言せよという思ってます。


参考:“『赤ひげ』ってお役人から強要されるものなのか http://intmed.exblog.jp/98268/)”





日本では関西の医科大学の研修医の”過労死”にてクローズアップされた研修医の過酷な労働は、時間外勤務を制限するような形で現在、研修に影響が出ているようです。
メディアはこのときは指導医=強者、研修医=弱者というスタンスで報道してました。メディアの表層的価値観の弱者の視点というやつなんでしょう。それに対して、科学的検討がなされたのでしょうか?また、医療全体のシステムという話にはなってないのです。行政批判に繋がることはなされてない。故に誰かがこの不完全な医療システムの犠牲者に成らざる得ないという現状は変わらない。

米国でも同様に研修医の労働時間制限がなされていて、JAMAで、システミックレビューにてその影響がまとめられている。確かにかれらのQOLは改善されているようだが、研修の質はやや低下の傾向が有るようである。

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Effects of Work Hour Reduction on Residents’ Lives
JAMA. 2005;294:1088-1100.
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/294/9/1088
45の文献がクライテリアに合致。
レジデント教育(手術経験、テスト成績、満足度)とレジデント生活のQuality(睡眠時間、Well-being)をアウトカムとする。
レジデントの仕事時間を制限した介入にて、手術経験、自覚した教育の質へは混合的な影響が出現したが、レジデントたちのQOLは一般的に改善した。多くの研究はデザインや実施上の大きな限界が有った。
結論としては、過去の介入から、就労同時間制限にて、レジデントの生活の質は改善しているが、長期的なレジデントの週労働時間を減少する長期インパクトは未だ不明。将来、QOLと患者のQuality も結びつけた研究が必要。
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現在、研修医の労働時間が制限されたことで、結局誰かに仕事が回っているという事実はどこに行ってしまってるのだろう?日本の大学の昨年の研修医が一番悲惨なのでは?と・・・自分の大学での勤務時代を思い出しながら・・・疑問に思う。

by internalmedicine | 2005-09-07 18:12 | 医学  

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