非定型抗精神病薬より以前の抗精神病薬の方が死亡リスク高い

FDAのadvisoryにより非定型向精神病薬は老人には使うなととられるかもしれない。それ以上に怖いのは従来の抗精神病薬に変更することがかえって危険かもしれないという話。



[j情報ソース:Risk of Death in Elderly Users of Conventional vs.
Atypical Antipsychotic Medications
http://content.nejm.org/cgi/content/full/353/22/2335]
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FDAが、非定型精神薬が老人の死亡率を増やす可能性があるとadvisory statementを発表した。しかし、このadvisoryは、従来の抗精神病治療薬には適応されてない。しかもこの種の薬剤の死亡リスクは検討されてなかったのである。

向精神薬治療は、老人では非比例的に使用されており、ナーシングホーム居住の1/4以上のメディケアで処方されている。認知症、幻覚、精神病、不穏、情緒発作などで処方されている。FDAにて認可されてない状態で多く処方されている。
利用料増加に伴い、1世代の(phenothiazineやburyrophenone類)から、2世代使用(e.g., aripiprazole [Abilify], clozapine [Clozaril], olanzapine [Zyprexa], quetiapine [Seroquel], risperidone [Risperdal], and ziprasidone [Geodon])へ急激なシフトが進んでいる。2005年4月、FDAは非定型向精神薬が死亡リスクをプラセボに比べて2倍にしているという報告を行った。痴呆老人17の短期ランダム対照研究であった。
しかし、このadvisoryは従来の抗精神病治療薬に関しては範囲を広げていない。将来研究の重点項目であるとFDAは記載はしている。抗精神病治療薬の死亡リスクに関わるデータはない状況で、臨床医は古い薬剤への転換を要求されているのである。


従来すべての介入研究で、の向精神薬の方が非定型抗精神病薬に比べ補正死亡率では有意に高い(?180 days: 相対リスク, 1.37; 95 %CI, 1.27 - 1.49; <40 days: 相対リスク, 1.56; 95%CI 1.37 - 1.78; 40 - 79 days: 相対リスク, 1.37; 95%CI 1.19 - 1.59; and 80 - 180 days: 相対リスク, 1.27; 95%CI 1.14 - 1.41) し、痴呆の有無、ナーシングホーム居住などのすべてのサブグループにても同様。

治療後すぐにリスク増加が始まり、従来の向精神薬治療の量に応じてリスクが高い。
非定型抗精神病薬に比べ従来の向精神薬治療は確認分析にてpropensity-score (傾向スコア)補正・instrumental-variable estimationでも一致した結果であった。
(註.どうも、propensity-scoreにしろ、intrumental-variableにしろ日本語訳が固まってないようである)


上記結果を信用するとすれば、従来の抗精神病薬は、非定型抗精神病薬と少なくとも同等の死亡リスクがあるため、従来の抗精神病薬に変更すべきではない
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日本のような低医療費の国では、施設設備に金がかけられず、大部屋というのが多くなる、
これは、感染症リスクだけでなく、老人などはせん妄などにより、その人本人だけでなく、他の入院患者に危険を及ぼす可能性がある。
老人入院患者のうち、大声やものを投げたり、包丁をもって立っていたなどというエピソードは医者を数年すれば数かぎりなく経験する。ICU症候群などもその一つだろう。そういう場合に、非定型抗精神病薬は威力を発揮している。せん妄状態回避するどころか、談笑する関係になることも多い。

FDAの主張で、日本の医療もかき乱されることが多くなったと・・・感じる今日この頃
まぁ、浜六郎の妄言に振り回されるよりは信頼性が高いのであろうが・・・

by internalmedicine | 2005-12-01 13:01 | 医療一般  

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