PET検診、がんの85%見落としとのこと

この記事はいろんなところでおそらく引用されていると思う・・・

PET検診、がんの85%見落とし…がんセンター調査
Yomiuri Online 2006年 3月 3日 (金) 14:31

国立がんセンター(東京)の内部調査で、画像検査PET(ペット、陽電子放射断層撮影)によるがん検診では85%のがんが見落とされていたことが分かった。




これを2×2表にしてみる(スクリーニング検査効果について


PET検診、がんの85%見落としとのこと_a0007242_91720100.jpg


感度のみは、計算できるので
その結果は・・・・18.1%(95%CI 22ー10%)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
SPin and SNout
Sin and SPout
(Specificityはrule in、Sensitivityはrule outを求める検査)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
は検査におけるEBM手法の基本



今回は、見逃しを問題にしたいので、感度だけを記事にしたのだろう

ただ、わたしらは、特異性も知りたいのだが・・・というのは、Unknown Primary TumorsでのPETの利用について、この検査の効果を期待しているわけだし、論文もあるようである。
対照とする集団に対して、特異性が高ければ、その検査の価値はたかい。


検診やスクリーニングで問題となるのは、それを利用する対象者たちの検査前確率(positive predictive value、negative predicitive value)である。

世の中検診や検査だけで100%診断できるし、見つかれば100%治療必要及び可能であるという極論を見聞きする。
100%に近い感度・特異度を有するインフルエンザキットでさえ発症直後は偽陽性を考慮しなければ診療不能であるように、がん検診なども同様である。


事前確率が不明な対象者としたら、推計的にはその検査の価値は、いかに高い感度の検査だろうが意味が分からなくなってしまう・・・これが人間ドックなのである。


人間ドックという言葉が私は嫌いだ。
なぜきらいか・・・対象者が勝手に検診をうけるということは検査前確率が絞れないからである。となると、その検査の意義が、ベイジアン的に推測できない中で、手当たり次第というロジックも何もない世界だからである

後、検診に関しては、他にlead time、length、selection biasなどの要因が関わるのであり、単純にPET検診が無駄ということにはならないのだろうが・・・十分な検討が今後必要であろう


ところで、国立がんセンターの記事でさかのぼると以下の記事が見つかる


高精度検診で、がん早期発見 国立がんセンター、22万円は安い?

国立がんセンター(東京・築地)のがん検診が、ハイテク医療機器を駆使して成果を上げている。そのがん検診のがん発見率は、5%を超える。なんと、通常の検診の五十倍以上もの精度だ。死因トップのがんを克服するには、どうしても早期発見は欠かせない。厚生労働省は全国に高精度のがん検診を普及させ、がん撲滅と医療費削減を目指す。(柳原一哉) 国立がんセンターの高精度がん検診は、がんセンターが開設した「がん予防・検診研究センター」で、・・・「PET(陽電子放射断層撮影)」やエックス線を周囲から照射する「CT(コンピューター断層撮影)」、・・・「MRI(核磁気共鳴診断装置)」、それに内視鏡といった高度な医療技術や手法を組み合わせて肺、胃、大腸など全身の臓器をくまなく調べる。・・・PET検査を組み合わせてほとんどの臓器と組織を検査する総合検診は、女性で二十二万五千七百五十円。男性だと、十八万九千円だ。がん予防・検診研究センターによると、昨年二月から今年一月末までの一年間に、四十歳以上の三千七百九十二人を対象に高精度がん検診を実施した。その結果、5・04%に当たる百九十一人からがんを発見できた。・・・・・(産経新聞)
Yahooニュース H17年11月3日2時34分更新



早期発見の成果は上がったが、調べてみると、PETで発見できた癌は少なかったとのことでしょうか?
これが、生存率に影響を及ぼすかどうか?・・・まだ不透明?

PSAからみた検診・人間ドックでもふれたが、特に人間ドックというのは検査前確率を無視して、金もてるから検査を受けるという考えであるから、医療のロジックに当てはまりがたい(再度言うが・・)。・・・そのことを分かって受けている人、それを行っている機関、安易に考えて報道するメディア、放置・促進すら行う馬鹿役人ども


今回、否定的な結果をあえて報道した今回のがんセンターと報道機関に対して、私の中で株が上がった・・・(私の意見など彼らは屁でもないだろうが・・)

全国のPETセンターは医療保険だけでは償還不能だろうから、PETを含む人間ドックは今後急激に先すぼみになる可能性がある。

ただ、FDG-PET/CT検査施行のガイドライン(ここのエビデンスレベル表示とまどう!)において、エビデンスレベルの高いものも多いので臨床的には不可欠なものとなりつつあることだけは、理解されてほしい。

by internalmedicine | 2006-03-04 09:18 | 医療一般  

<< 若年かつ重症慢性閉塞性肺疾患で... いいとこどりは、どこの業界だ/// >>