肥満と呼吸器疾患



Review:肥満と呼吸器疾患
The effect of obesity on chronic respiratory diseases: pathophysiology and therapeutic strategies
CMAJ • April 25, 2006; 174 (9).

運動不足(閉じこもり)と工場化による汚染増加が肥満と慢性呼吸器疾患増加の大きな原因となっている。たとえば、COPD、喘息、OSA、肥満低換気症候群など
肥満は呼吸器系疾患にとって重大なリスク要因として浮上し、多くの場合は体重減少が重大な自覚症状改善と関連する。さらに、肥満は疾患の進展・症状に関連する。
それぞれの疾患について肥満との関係でレビューされたもの

肥満や過体重がどれほど死亡率と関連しているか・・・


【呼吸機能】
脂肪組織の蓄積は成人・子供の換気機能を傷害、BMIが増えることによりFEV1、FVC減少。TLC、RC、呼気残気量の低下、胸部拘束性変化も肥満と関係、おそらく横隔膜・胸壁の脂肪組織のメカニカルな影響。横隔膜の広がりは制限され、胸郭コンプライアンスは減少する。予測TLC<85%というような場合は(0.9-1.0kg/cm以上のような)極端な肥満に見られる。
FEV1/FVC<70%はsmall-airway diseaseの証拠とされているが、肥満においては疾患特徴的にものではない。肥満においては拡散能が増加するが、恒常的ではない。
呼吸筋力は肥満では障害されていることが多く、最大努力吸気圧の減少が見られる。
灰万における呼吸筋力低下は筋力の効率低下であり、胸壁コンプライアンス低下、肺容量の低下の両者が関係している。
驚くにあたらないが、運動能力は肥満者でとくに傷害されている。
最大酸素消費量による評価による心血管系fitnessは一般的に肥満患者では保たれているが、ウォーキングのような運動の時の機能は減少する。すなわち、体重があるので代謝コストが高い状態では限界が早く生じるようである。
呼吸苦と肥満との明確な相関関係がある。呼吸仕事量は肥満とともに増加し、胸壁コンプライアンス・呼吸筋力の低下とともにそれは生じる。呼吸苦は呼吸筋への要求と呼吸実際に筋力に生じる強度との不均衡によりもたらされ、呼吸努力増加の自覚を生じる。
さらに肥満患者での呼吸苦は、肺・心臓疾患との合併によって、さらに明らかとなる。


【COPD】
COPDは世界レベルでは死因の4番目、肺気腫は体重減少と筋力低下で特徴づけられている。肥満・過体重は、肺気腫より慢性気管支炎で多く観察されるが、ルールというほどではない。COPDは運動しない、閉じこもりのライフスタイルをとりやすい。このことが肥満の一因である。COPDにおける脂肪蓄積は疾患予防的に働くという考えはあまりに単純化しすぎであろう、肥満のリスクを無視したものであり、BMIが増加してもCOPDでの筋力増加につながらないことは重要。正常のBMIでも筋力低下がCOPDではあることから予想されるものである。
COPDは喫煙・脂質代謝異常・高血圧といったものと独立した心血管リスク要因と認識され、2-3倍のリスクがあるとされる。内臓脂肪との関係のさらなる研究が必要。

【喘息】
肥満と喘息の頻度は平行して増加していると西側諸国では報告され、関連があるのか、たまたまなのかが検討されている。メカニズムとしての可能性も示唆されており、重症喘息を有する若年成人では肥満が疫学的に増加と関連し、コントロール困難要因という報告がある。
肥満と喘息に関しては、研究デザインにより異なる結果が出ており、喘鳴と喘息の分類ミスなども原因である。たとえばSchachterらは肥満と臨床診断喘息との相関を見いだしたが、気道過敏性との関連を見いだせなかった。
仮説としては、メカニカルな問題以外に、CRP濃度の増加、TNF-α、IL-6の増加があり、leptin濃度のも喘息の重症度に関連する可能性、adiponectin分泌・抗炎症性サイトカインの減少が肥満と喘息の関連と関係する可能性もある。
BMIと喘息の関係は男性より女性で特に強度である。
エストロジェンが免疫応答を調整し、喘息のリスクを増加する可能性がある。
染色体部位が肥満遺伝子と喘息遺伝子の関係で注目されているが、このトピックスは今後の課題。

【閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)】
OSAの頻度は一般に男性で25%-58%、女性で10-37%といわればらつきがある。
民族差地域差がある。
肥満がOSAのリスク要因とはよく知られており、後頭部の脂肪組織沈着と肥満による肺容量の減少が気道閉塞を生じ、気道の形態を変化させ、虚脱をもたらすこととなる。OSAの約70%が肥満であり、肥満のうち約40%がOSAである。
Class IIIの肥満ではほぼ全例がOSAである。

【Obesity hypoventilation syndrome(OHS)】
高炭酸ガス血症性呼吸不全と肺性心は主に肥満で見られ、呼吸不全の他の原因がないときに、この疾患が報告されたのは50年前。呼吸不全、重症の低酸素血症・高炭酸ガス血症・肺高血圧がもっともみられる所見。
多くのOHSはOSAを合併するが、OHSの中でもOSAが無い症例が存在し、以下の如き診断ボックスに相当する。


by internalmedicine | 2006-04-26 16:13 | 呼吸器系  

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