訴訟乱用(lawsuit abuse)

訴訟乱用(lawsuit abuse)に関して、あのブッシュは、どこぞの国のトップと違い、真剣に取り組んでいる。米国の婦人科医は、投稿万ドルから11万8000ドルを損害賠償保険として支払っているとのこと。そしてそれは保険会社と一部の弁護士の利益にしかならず、当事者には何の利益ももたらさないことなどがホワイト・ハウスで話されている。

参考:(医療訴訟関係者は診ないぞ!と医師 大激怒!医療損害賠償保険の破綻近し

米国内の分析にて医療訴訟が多い州は新規婦人科医の供給が少ないという当たり前の結果がある。この原則に従えば、福島県は新規産科医は激減するだろうし、その通りの減少が生じていると聞いている。


この訴訟騒ぎは、民事上だが、日本では、刑事上の処分される・・・これが世界的に見ても異常事態ということを認識されるべきである。


これから2つの記事は、福島県警・検察の暴走前・・・

医療サービス 消費者主義導入は不適         大井 玄 東大名誉教授

 医療費の適正化をめぐる最近の論議を聞くと、医療サービスへの期待が混乱しているように見える。問題の核心は、医療サービスは限られた資源を平等に利用すべき「公共財」なのか、通常の物や、サービスのような市場が評価する普通の財なのかという点である。 戦後の日本や西欧諸国は前者の立場を、米国は後者の立場をとってきた。しかし、英国はサッチャー政権以来、競争原理や民間企業の手法を導入した。それがもたらした結果について、英国で権威ある医学誌『ランセット』は今年4月30日号の社説で、こう評価した。 「すべての政治家が、医療サービスの改善を妨げる最も重要な要因への対応に失敗した。医師の破局的な士気低下である。国民医療保険制度(NHS)の下で、医師は全く勤労意欲を喪失している」 ・・・・



産婦人科医、3割が「診療やめたい」・厚労省調査 
産婦人科医の3割近くが「分娩(ぶんべん)などの産科診療をやめたい」と考えていることが28日、厚生労働省研究班の調査で分かった。不規則な診療時間など仕事の負担が重いことや医療訴訟の多さが主因。希望する医師が少なく今後の医師不足が予想されるなど、産科診療を取り巻く厳しい実態が浮かび上がった。 調査は研究班が昨年、全国の産婦人科医約2200人を対象にアンケート形式で実施した。内訳は男性が55%、女性が45%で、平均年齢は 33.1歳だった。 (07:00)日経 H17.6.29





不当逮捕以降の記事では、前の危惧が現実のものとなっている・・・


地域の病院が分娩から撤退 産婦人科医10年で8%減
朝日新聞 2006年5月5日
厚生労働省調査(04年)によると、医療機関で働く産婦人科医師は計1万1282人。全医師数は増加傾向にあるのに、同科医師は94年からの10年間で8・4%、1058人減った。地域から大学への医師引き揚げも、問題に拍車をかけた。新人医師に幅広い診療能力を身につけさせようと04年度から始まった臨床研修の必修化で、大学医局に2年間は、新人の研修医が入らなくなったためだ。人手不足に陥った大学医局が、各地の関連病院から次々と医師を引き揚げた結果、担い手が少ない産婦人科などで休止や廃止が相次ぐようになった



産科アンケート大野病院医師逮捕8割「影響ある」
Yahoo/河北新報:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060505-00000006-khk-toh
福島県立大野病院(大熊町)の医療事故に伴う産婦人科医逮捕をめぐり、河北新報社の産科医療アンケートで8割の病院が「影響が出ている」と答え、医療現場に波紋を広げていることが明らかになった。小規模病院が難しい症例の患者受け入れをためらったり、医師派遣を中止したりする動きが出ているほか、産科医志望者の減少傾向の拡大を懸念する声も上がっている。医療事故は帝王切開手術で癒着胎盤を取り除く際、大量出血で患者が死亡。産婦人科は常勤医1人体制で、癒着胎盤は数千人に1人とされる症例だった点や、国が明確な基準を示していない「異状死」の届け出義務違反も逮捕容疑となったことから、日本産科婦人科学会などは「逮捕は不当」とする声明を出した。
具体的な影響は、診療面が23カ所と最も多い。「大量出血が予想される症例は扱わない方向」(秋田・公立病院)、「訴訟を起こされるようなリスクを伴う患者の診察が怖い」(福島・公立病院)など、地域医療の現場に微妙な影を落としている。「大学による医師派遣中止・引き揚げ」は13カ所で、派遣を受ける側は「1人体制の病院には大学が派遣しない」(秋田・民間病院)、「中規模の病院からも引き揚げるといううわさがある。妊婦が通院に時間がかかるようになると、社会問題化する」(岩手・公立病院)などと指摘。一方の大学病院は「1人体制は医療事故のリスクが高く、撤退するしかない」との意見を寄せた。




米国は大統領が聞く耳をもっているが、日本の総理大臣は、lawsuit abuse問題に関して無関心どころか、医療事故を医師個人の資質の問題として、懲罰主義だけを推進している。
顕著に起きているのは、産科だが、実は外科系、侵襲的手技をともなう各科でも早晩生じる現象である。実際今年の研修医を終了した診療科進路において、その傾向が現れている。
産業界の意見に聞く耳しか持たない政府は亡国への道筋を形成しているのである。

by internalmedicine | 2006-05-05 21:51 | 医療一般  

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