中年での起立性低血圧(OH)も死亡率増加 OHの臨床的重要性

OH(起立性低血圧)が中年成人でも死亡率予後因子となるとのこと・・・

Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Studyからの解析で、“起立性低血圧を起立時、収縮期20mm Hg減少もしくは拡張期 10 mmHg減少”とした定義の上から一般の5%という比率で存在するとのこと。
いままでは、高齢者や虚弱な一部の人という事であったが、対象がより広がったことになる。


Orthostatic Hypotension Predicts Mortality in Middle-Aged Adults
The Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study(Circulation. 2006;114:630-636.)
OH(起立時、収縮期 20mmHg減少 or 拡張期 10mmHg減少)と13年間の中年黒人・白人男女の研究

全原因死亡率はOH有り13.7%、無し 4.2%
民族・性差・年齢補正後、OHの全原因死亡率ハザード比(HR)は2.4(95%CI 2.1 - 2.8)
心血管リスク要因・死亡率リスク要因補正後もその相関は変化無く、HR 1.7 (95%CI 1.4-2.0)
この相関は、フォローアップ2年除外、冠動脈疾患・癌・卒中・糖尿病・高血圧・健康状態不良の自覚なしに限定しても、相関は継続
死亡原因分析にて、各リスク要因OH有無比較の死亡率ハザードは心血管疾患原因死亡HR 2.0(95%CI 1.6-2.7)、他原因死亡でHR 2.1(95%CI 1.6-2.8)
原因分析としては、癌に対しては有意差無く、オッズ比 1.1 (95%CI 0.8-1.6)となる



通常、血圧は、起立後数秒で変動を生じ、30秒から20分で安定する。液性成分の移動や起立時の重力の影響で圧受容体への変化をもたらし、カテコラミン放出させ、心拍増加後血圧安定となる。この過程の機能障害は、心臓の機能障害、不整脈、心不全そのものがOHを生じ、卒中の基礎リスク要因となることもある。自立神経障害というもうひとつの可能性、血管内有効volumeの減少、圧受容体の機能障害などが関与。加齢や基礎疾患として糖尿病、薬物、アルコール症、ほかの神経疾患が自立神経障害を生じる。



高齢者でのOHの死亡率増加寄与はThe Honolulu Heart Program (Circulation. 1998;98:2290-2295.)などに代表されるように確立しつつある。
起立性低血圧というのは一般の高齢者の4-33%という頻度で、多くの研究は、失神・dizzinessの研究であり、実際はもっと頻度が高い可能性がある。
死亡率増加と関係。ふらつき・転倒事故増加。ただ、転倒に関しては多因子的。baroreceptor感受性現象、交感神経刺激の心反応性低下などや、加齢とともに前庭機能の低下がもたらされ、vestivulosympathetic reflexの関与があるという一仮説がある。
前庭神経系からの求心性インプットを通して交感神経outflow調整フィードバックシステムの障害という仮説(Annals of the New York Academy of Sciences, Vol 781, Issue 1 458-473)があり、実証的研究も報告((Circulation. 2002;105:956.))されている。
また、日本の報告(J Hypertens. 1993;11(suppl 5):S306?S307.)では、高血圧からOHへ転換するケースではblunted sympathetic responseがあるとのことなど、より注目されてもよい病態と思う。収縮期血圧OHだけでなく、拡張期血圧OHに関しても注目されるべき。



このことから、少なくとも高齢者だけでなく、中年においても、OHを考慮すれば、血圧管理上、“The Lesser, The Better”でよいはずもないと、素人ながら疑問に思っている。

ALLHAT研究でのα遮断薬ドキサゾシンが中止
に追い込まれた理由に、OHに関する機序を思いをはせるのだが・・・

by internalmedicine | 2006-08-16 11:08 | 動脈硬化/循環器  

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