ADAステートメント無視のメタボリックシンドローム 破綻の始まり?


昨年のReviews/Commentaries/ADA Statements ADA Statementの結論としては、“より多くの研究がなされるまで、メタボリック・シンドロームの診断基準にあるかどうかを無視して、CVDリスクに対する評価・治療を行うべきである”というもの
である。

いつもは学会ステートメントおよび欧米の論調が大好きな教授様が多いのに、
なぜか、このメタボリックシンドロームに関しては、ADAステートメントは無視され、テレビで、このメタボリックシンドロームを耳にしない日もないくらいの普及振りである。


ADAステートメントの要旨:
"metabolic syndrome"という言葉はインスリン抵抗性に関連すると思われる病態生理と関連するCV(cardiovascular)リスク要因群のclusterである”とし、“このclusterは、CVリスクに対して確かにリスク要因であることには疑問がないが、定義があいまい、病態自体に確実性がないという解説とともに、CVリスク要因として疑問と述べられている。
(Diabetes Care 28:2289-2304, 2005)




メタボリックシンドロームって・・・そんなにすごいんか?でも書いたが、

私はこの疾患群に関して以下の疑問をもっている。
1)疾患の定義のばらつき
2)定義のあいまいさ
3)ほかのリスク要因との独立性

以下の記事が掲載されていたが、メタボリックシンドロームのリスク要因としてのあいまい性が具現化してきた事例ではないかと思う。
血圧というリスクとメタボリックシンドロームというリスクは因子としての独立性がほんとにあるのだろうか?

メタボリック症候群、血圧正常なら動脈硬化のリスク同じ
2006年11月03日14時00分
 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)であっても、生活習慣で血圧が正常に保たれていれば動脈硬化のリスクは上がらない。そんな傾向が東京大病院循環器内科の石坂信和・特任講師らの調査で浮かんだ。同シンドロームは生活習慣病の危険を高め、心臓病や脳卒中を招く動脈硬化につながるとして注目されるが、同シンドロームの有無だけにとらわれず、生活の中で個々の危険因子に注意する必要性が示される結果だ。

 米国心臓協会の専門誌に報告した。都内の病院で94~03年に人間ドックを受診した約8000人の血圧や血中脂質の値などを分析したほか、首の動脈に軽度の動脈硬化が起きていないかどうか、超音波装置で調べた。

 このうち、血圧がやや高めだが正常範囲である「上140未満、下90未満」の約6000人を対象に、同シンドロームの有無と動脈硬化のリスクの関係を調べてみた。

 女性の場合、同シンドロームがある人の動脈硬化のリスクは、ない人に比べて2.7倍高かった。だが、女性のうち、同じ血圧でも降圧剤に頼っていない人の動脈硬化のリスクは、同シンドロームがあってもなくても、変わらなかった。

 血圧が同じでも、薬を飲んでいる人のリスクが高くなっているらしい。石坂さんによると理由ははっきりしないが、薬に頼らないと正常な血圧を保てないこと自体がリスクを高めている可能性が考えられるという。男性は、いずれの場合もリスクに違いはなかった。

http://www.asahi.com/life/update/1103/005.html?ref=rss

(記者の頭の悪さが推定できる、記事タイトル)

by internalmedicine | 2006-11-03 16:50 | 動脈硬化/循環器  

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