脂肪吸引は動脈硬化予防にはならない可能性


要するに、脂肪吸引というのはエステティック以外の健康上の利点にはつながらない可能性が大ということですね。

はっきりと動脈効果抑制と断定している宣伝は早速取り下げていただきたい!

Absence of an Effect of Liposuction on Insulin Action and Risk Factors for Coronary Heart Disease
NEJM Volume 350:2549-2557 June 17, 2004 Number 25
脂肪吸引が肥満の代謝的合併症の治療に有効であるという提案がなされるが、大量の腹部脂肪吸引の冠動脈への代謝的リスクに対する影響を評価したもの。
【方法】15名の肥満女性、肝臓、骨格筋、脂肪組織のインスリン感受性評価( euglycemic–hyperinsulinemic clamp procedure・isotope-tracer infusion)、炎症性メディエーター、ほかのリスク要因を前値と10-12週で評価
8名は正常の耐糖能、7名は2型糖尿病
【結果】脂肪吸引で、正常の耐糖能対象者の腹部皮下脂肪の44%まで減少・9.1±3.7 kgの脂肪 (総脂肪 18±3 %減少, P=0.002)、糖尿病対象者の28%減少・10.5±3.3 kg of fat (総脂肪 19±2 %減少, P<0.001))

脂肪吸引により筋肉、肝臓、脂肪組織のインスリン感受性は変化無し(それぞれ糖代謝の刺激、糖合成の抑制、脂肪融解の抑制で評価)
CRP、IL-6、TNF、アディポネクチン濃度を変化せず、冠動脈の他のリスク(血圧、血糖、脂肪代謝)への影響を与えず
【結論】腹部脂肪吸引は肥満に関連した代謝異常を改善させず。脂肪組織容量の減少は体重減少による代謝的利点の目的を果たさず

【Euglycemic–Hyperinsulinemic Clamp Protocol】
2段階の等血糖性クランプ・プロトコールで開始、6時間持続。
100mg/dlの血糖レベルで様々な20%デキストロース含有約2.5%ブドウ糖混合液注入速度で維持。第一段階(3.5-6.5時間)では、インスリンを20mU/m^2/min(10分間2段階開始用量後:5分間80mU/m^2/min→5分間40mU/m^2/min)

クランプ・プロトコールの2段階(6.5-9.5時間)では、インスリンを10分間開始量(200mU/m^2/min5分→100mU/m^2/min5分)後50mU/m^2/minで投与。

このインスリン注入速度の結果でlipolysisにおけるブドウ糖合成(第一段階)とglucose disposal(第2段階)へのインスリンの影響を評価


http://square.umin.ac.jp/pb165/ir/ の解説)の一部引用
 euglycemic-hyperinsulimenic clampは血中インスリン濃度を100 micro u/mlに保った時、肝臓での糖放出が10%以下抑えられる(0.2~0.4mg/kg/min)。1.0mU/kg/minまたは40mU/m2/minのインスリン注入速度で目標インスリン濃度に到達できる。血糖が一定であれば、外部からの糖注入率(GIR; glucose infusion rate)が、筋を中心とした末梢での糖吸収率と看做すことができる。 GIR(mg/kg/min)がインスリン抵抗性の指標のM値となる。実際にはインスリン濃度は患者間・アッセイ間で異なるのでM値(glucose metabolism)をsteady stateでの血漿インスリン値で割ったM/I値、steady stateでの血糖でM値を割ったMCR(glucose metabolic clearanse rate)も併用する。
 肝臓での糖新生を正確に見るためには、3Hブドウ糖を非放射性ブドウ糖とともに注入しトレーサーの消失率とGIRの差から糖新生を測定する。

by internalmedicine | 2004-06-17 11:27 | 動脈硬化/循環器  

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