Googleは優秀な診断医(a good diagnostician)

BMJの論文を元にしたロイター記事があり、そのニュースを元にした2ちゃんねる・スレッドがあった。Googleさえあれば医者はいらない・・・という、最近はやりのスペシャリスト軽視の話の流れになっていたと思う・・・原文をみるとやっぱり違うのである。


医者(あるいは、それに匹敵する知識がある人)じゃなければ、Google検索は使いこなせない。


サインや症状を用いてGoogle検索したところ55.7%(95%CI 38.3% - 77.1%)で正しい診断を得たと報告。
ある医学雑誌(the New England Journal of Medicine)に掲載された26例の症例報告を用い、3-5つの特異的症状と所見を用いて検索した結果の正診率である。
オリジナルな診断とGoogleの結果を比較した。Google検索は非特異的な所見の複雑な病気を判断するのには有効でなかったが、ユニークな所見の有る場合の診断として特に有効であった。

Googling for a diagnosis—use of Google as a diagnostic aid: internet based study
BMJ 2006;333:1143-1145 (2 December)

感染性心内膜炎、Cushing症候群、好酸球性肉芽種、結核・リンパ腫、神経線維症、アミロイド、Acute chest syndrome、閉塞型肥厚性心筋症、クロイツフェルト・ヤコブ病、Churg-Strauss症候群、猫ひっかき病、MADH4 mutation、TEN、Brugada症候群で一致したとなると、ギョッとなるのだが、内容を見ると分かるのだが、それなりの医師が特異的と思われるキーワードを選択し、検索されたページで診断を示唆するかどうか判断し、もし無ければ別のキーワード選択するという結局は医師主導型のやり方である。すなわち検索者の知識に依存した情報獲得手段としての評価なのである。

Greenwaldが書いているように、ユニークな症状・所見は検索用語だと比較的容易であり、Googleを診断に用いるときかなり効果的である。

複雑な組み合わせ疾患や稀な所見である通常の疾患では検索失敗に終わりやすく、情報検索の有用性や有益性は、主に検索者の知識のベースに依存することとなる。

今回の検討では正確な診断を目隠ししてあったが、呼吸器および睡眠臨床の専門家とリウマチ医が著作者であり、診断が最初から明らかなこともあったので検索用語の選択に大いに影響を与えている。

患者自身がGoogle検索を行う場合は有効に検索できるとはいえず、正診に至ることは少ないだろう。human expertである医師がGoogle検索することは、生産性の高いことであり、検索用語としてどの所見・症状を選ぶか、そして検索された文書のどれを選ぶかが医師の能力なのである。また、トレーニング中の医師にはGoogle検索は教育的であり、鑑別診断構築に役立つという意義もある。

診断医の役割は医師のやりがいのある、充実した仕事の一つとして残り、この役割の完遂のため、200万の事象をあたまで扱うと言われている。さらに医学知識が広がり、これでも十分でなくなってきている。サーチエンジンは知識データベースが増大しても迅速にアクセスできるのである。

Googleは30億文献以上アクセス可能で、PubMedを遙かに凌駕する状態である。Googleはあまりにpopularになり英語の動詞化されているとも言われている。Google Scholarもβ版ながらpeer reviewed articleのみ検索できて有用である。

by internalmedicine | 2006-12-01 15:33 | 医療一般  

<< 萎縮医療および低コスト医療を強... サイアザイド利尿剤+ARBはA... >>