テロメア長とCHDリスク関連有り、スタチン治療で予防可能?

テロメア長と心血管リスクの関係が明らかになっただけでなく、スタチンの抗脂質効果以外の役割もちょっと解明の方向か?

Telomere length predicts heart disease risk
Lancet 2007; 369: 107-114
12 January 2007
中年での、高リスク男性では、CHDの予測因子として、白血球telomere長が予測因子となる。より短いtelomere長(年齢に対して短縮しているDNAの端末領域)はCHDリスク増加し、超過リスクはスタチン治療により鈍化する

故に、マーカーはスタチン治療による利益を受ける高リスク群を選別するのに役立つとこの論文の著者らは述べている。

Nilesh Samani (University of Leicester, UK)らは、484名のWOSCOPS参加の484名からtelomere長を1058名マッチ対照患者と比較

テロメア3分位の中間・短縮群では、CHDイベントのリスクは、最長群に比べ、それぞれ、1.51 (p=0.029) and 1.44 (p=0.009)

プラセボ比較pravastatin治療効果は、非致死的心発作とCHD死亡において31%相対的に減少させる。プラバスタチンのCHDイベントへのインパクトは、telomere長カテゴリーで検討。2つの短テロメア・カテゴリー群でのCHDリスクは最高位三分位の2倍であり、ORで 1.93 (p=0.0005) 、1.94 (p=0.0006)であった。pravastatinでの治療は、1.12、1.02(both p=nonsignificant)と減少。




心血管疾患リスクにおいて、やはり影響が大きいのは、年齢。年齢において、テロメア長というのは科学的な臭いがして、納得しやすい話と言うことになるのだろう。疫学的研究によりいくつかの心血管リスクをほとんど説明しうるリスク要因が同定されたが、冠動脈疾患の発生と年齢という関係が広く認められている。細胞の老化は、動脈硬化プラークを特徴とし、in-vitroでの冠動脈内皮細胞の老化促進の遺伝子発現といった特徴をもつ。そして幾分かは分子学的老化というものがこの老化の固体差に関係があるものと思われている。

テロメアは、ご存じの通り、染色体DNAの最端末であり、TTAGGGというsequenceの多くのtandem repeatが本体である。機能面では解明が十分とは言えないが、細胞の維持安定性と関係、体細胞の分裂と共にその短縮化がみられる。Olovnikovはcellular behaviorの決定因子としての生物学的時計としての役割をこの短縮化に見いだした。平均テロメア長が細胞の老化・死のcritical valueであるという事が報告され、少なくとも細胞レベルでは、生物学的年齢のマーカーとして平均テロメア長を指標とすることが考えられている。

製薬メーカーがとても興味を持つであろう、テロメア平均長とスタチン治療の関係だが・・・
脂質や炎症へのスタチンの影響と独立したものであるようであり、血中のLDL、HDL、TG、CRP、フィブリノーゲン値の影響はなかったとのこと。
スタチンの血管内皮の前駆細胞への効果が考察されており、telomere capping protein TRF2の発現増加が見られるという報告
(Circulation. 2004;110:3136-3142.)が、一つの説明として論文中に掲げられている。
、短縮化されたtelomere患者のリスクに対して、スタチン治療が内皮や他の細胞でのTRF2発現増加、、telomereの構造の安定化が、少なくとも一部関与していることが示唆されている。
スタチンは骨髄由来の血管内皮前駆細胞のmobilisationを促進し、血管修復に寄与するなど

・・・これからスタチンの宣伝の多くに使われる論文となることでしょう・・

by internalmedicine | 2007-01-15 08:19 | 動脈硬化/循環器  

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