中等学校で性教育しても堕胎は減らない?

性教育議論というのがあるのだろうが、いくら議論を机上で行っても、理想主義や理念に吹き飛ばされ、結局、玉虫色に終わったり、議論の一時の流れで決まってしまうリスクがある。実証主義的なデータがその根本に必要なのである。

BMJに興味ある報告があった。中等教育で性教育は無駄というのである。
さらなる低年齢での初等教育が必要なのか?あるいは性教育全般に意味がないのかはさらなるデータが必要であろう。



教育の世界というのも、医学の世界より官僚主義がはびこってるところで、科学的検討というのがほとんどなされてないところだなぁ・・・と、統計学的用語の全く入ってないアンケート調査で議論を進めている場面に医師会の世話役をしてたときに感じていた。まぁ、反論もなく、それで事が進むところにこの国の中央から末端まではびこった非科学性が根底にあるのだろう。

ゆとり教育(without cram(ming) or cram-free)からゼロトレランス(Wikipedia:Zero tolerance(school))へ教育方針が転換しそうだ(これって、zero toleranceとcrammingというのは違うベクトルを向いているので議論がかみ合わない元になるのでは・・・)。その方向性が正しいかどうかは一定のアウトカムを仮定して評価する基準を設けた方がよい。でなければ、結局後世に何も残さない施策になる可能性がある。十数年前、ゆとり教育の推進者の講演を聴かされたことがあるが、実に、表層的で、官僚的で、個人経験にしかもとづかない意見であったことを思い出した。

だいぶ、横道にそれたが・・・
Impact of a theoretically based sex education programme (SHARE) delivered by teachers on NHS registered conceptions and terminations: final results of cluster randomised trial
BMJ 2007;334:133 (20 January)
【デザイン】介入後4.5年のクラスターランダムトライアルのフォローアップ
【セッティング】東スコットランド25セカンダリ・スクール女性のNHS記録
【参加者】4196名女性
【介入】SHARE programme (intervention group) v existing sex education (control group).
【主アウトカム測定】NHSの妊娠・堕胎記録(20歳時までの)
【結果】
"intention to treat" analysisで、1000生徒とあたり(16-20歳時)
妊娠:300 v 274(対照); difference 26, 95% CI –33 to 86
堕胎:127 v 112(対照); difference 15, –13 to 42
【結論】この性教育プログラムでは20歳までの妊娠も堕胎も減少させないと言うことが判明した。
効果がないのはその話し方によるものではない。通常のprovisionよりさらに性教育を教師にし向けることはティーンエージャーの堕胎減少に役立たないのである。

by internalmedicine | 2007-01-19 09:42 | 医学  

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