肉親死後悲嘆の“段階説(stage theory)”

医療と心理的な反応に関しては、科学性でなく、語彙を知っているということで教授をなされる方々が多い。科学的根拠を示さない、教義的な彼らに疑念を抱いているのは私だけだろうか?

死後、残された家族の悲嘆に関して、PDQ(R)でも段階説が採用されている。
・ショックと麻痺:この初期段階では、生存者は喪失の情報を処理できない;茫然として無感覚になる。
・熱望と希求:この段階では、強い分離不安と、喪失の現実性の無視または否認とが結びついている。これにより、いなくなった人を探して取り戻したいという願望が生まれる。この希求が失敗すると、欲求不満と失望が繰り返される。
・解体と絶望:しばしば抑うつ状態であることを報告し、今後の行動を計画するのが困難である。気が散りやすく、ものごとに集中できない。
・再組織化:この段階は第3段階と多少重なっている。



“段階説(stage theory)”を日本人の悲嘆回復の流れに“stage theory”を用いるのはナンセンスという考えもあるようだ。


日本以外でも当然議論になっている。
Stages of grief: Fact or fiction?
Kansas Nurse, Aug 2001 by Jeffers, Steven L


An Empirical Examination of the Stage Theory of Grief
JAMA. 2007;297:716-723.

“悲嘆段階説”は、肉親に先立たれたときの過程モデルとして広く認められて、医学教育でも受け入れられ、支持され、様々な状況でも適応されている。しかし、この説は経験的にまだ検討されていない。

5つの悲嘆指標を相対的大きさとパターンを経過時間による変化として調べたもの

長軸コホート研究(Yale Bereavement Study)で、Connecticutに居住する233名の肉親に先立たれた個人で2003年1月~2003年1月までのデータ

主なアウトカム:disbelief(疑念・不信)、yearning(熱望)、anger(怒り)、depression(意気消沈)、acceptance(受容)の5つの評価アイテム


このstage theoryに反して、disbeliefは初期の、主な悲嘆指標とはなりえなかった。
肉親の死後、1-24ヶ月の間acceptanceはもっとも推奨されるアイテムであり、earningは主なnegativeな悲嘆指標であった。
心理的反応の上昇・下降を考慮したモデルにおいて、再計測にて、disbeliefは初期増加が1ヶ月後減少する。yearningは4ヶ月後がピーク、angerは5ヶ月後がピーク、depressionは6ヶ月後がピーク
acceptanceは観察期間を通して増加
5つの悲嘆指標はstage theoryで予測された通りに、最大値を迎えている。



“disbelief(不信) → yearning(熱望) → anger(怒り) → depression(うつ)”の順でnegativeな反応が生じ、
受け入れは徐々に時間経過により増加すると言った方が正しい気がするのだが・
・・

医療従事者としては患者の死をいかに扱うかが今までの関心事だったが、今後は不幸な転帰をたどる(った)家族の心情まで与した診療姿勢が求められているのである。残念ながら、このコストは、医療報酬には全く反映されないし、家族によっては、要望が無限大なこともある。


医療過誤と称する報道をみると、メディアがdisbeliefやanger、depressionをうまく利用して、医療不信を煽る番組作成していることに気づく。

by internalmedicine | 2007-02-21 07:09 | 医療一般  

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