くも膜下出血後の発熱

学生時代、くも膜下出血(SAH)や脳出血後の発熱は中枢熱とか聞いたことがあるがほんとだろうか?
卒中のガイドライン(2005 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care
Part 9: Adult Stroke
)では
37.5°C (99.5°F)を超える場合、合併症や死亡率増加と相関
低体温療法はneuroprotectiveな作用がある
VFによる心停止後の生存率、機能的アウトカム改善は証明されているが、ヒトのトライアルでは急性卒中ではまだ判明していない。継続中の大規模臨床トライアルにてその理解が深まるかもしれない。現時点ではこの治療法に対しては中間的推奨しかできない。


SAHだけに限定して話をすると、高体温は血管痙縮と予後不良に相関とのこと( Neurology. 2001 May 22;56(10):1299-304.

Fever after subarachnoid hemorrhage
NEUROLOGY 2007;68:1013-1019
353名のSAH患者の連続コホート、最大体温(Tmax)を、SAH病日0-10日のうち少なくとも7日記録できた患者。熱(>38.3℃)はルーチンにアセトアミノフェン使用し、水循環クーリング・ブランケットを使用
daily Tmaxを37.0℃を超えた分、extreme Tmaxを38.3℃を超えた分と計算

平均daily Tmaxは1.15℃(range 0.04-2.74℃)
熱の強い予後因子はHunt-Hess gradeと脳室内出血(IVH)であった
daily Tmaxは死亡リスク増加と重度disability (modified Rankin Scale ≥ 4, adjusted OR 3.0 per °C, 95% CI 1.6 to 5.8)と相関、IADLs(OR 2.6, 95% CI 1.2 to 5.6)、認知障害と相関(OR 2.5, 95% CI 1.2 to 5.1, all p ≤ 0.02).

この相関はextreme Tmaxで検討したときも同様




小児感染症の時熱をさげることをきらう医師も多くなったが、neuroprotectionという意味で、感染症の時と脳血管障害や頭部損傷のときの考え方がなぜ違うのだろう?
感染症において罹病期間の延長の報告や種類によっては免疫反応の抑制などの報告があるようである。アセトアミノフェン使用はその影響の方向性にばらつきがあるようである。

by internalmedicine | 2007-04-04 09:00 | 医療一般  

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