内視鏡処置必要な場合は事前PPI注射をした方が良い?

NEJMの論文だと、上部消化管出血にて内視鏡処置する事例ではPPI点滴が有効のようである。

Omeprazole before Endoscopy in Patients with Gastrointestinal Bleeding
NEJM Volume 356:1631-1640 April 19, 2007 Number 16

胃内のpHを中和したら、出血血管の血栓が安定するかどうか?
内視鏡治療を必要とする症例での内視鏡前にomeprazoleを注射するという先制的な処置が有効かどうか?
上部消化管出血の安定のため入院した連続症例で、omeprazole(ボーラス80mgとその後8mg/時間投与)とプラセボを割り付け

17ヶ月間、638名参加
内視鏡的治療の必要性はomeprazole群で少ない

(60 of the 314 patients included in the analysis [19.1%] vs. 90 of 317 patients [28.4%], P=0.007).

平均輸血量 (1.54 vs 1.88 units P=0.12) 、再出血患者数 (11 vs 8, P=0.49)、緊急手術患者数 (3 vs 4, P=1.00)、30日内死亡患者数 vs 7, P=0.78)に有意差無し

3日未満入院
omeprazole群:60.5% vs プラセボ:49.2% (P=0.005)

内視鏡にて、出血性潰瘍が少なく (12 of 187, vs. 28 of 190 in the placebo group; P=0.01) 、きれいなbaseをもつ潰瘍が多い(120 vs. 90, P=0.001)




当山ながら、このような治療法に対して、現行の日本の保険適用はない。
だが、上部消化管出血のある例に対して、すぐさま、PPI点滴をすべきかどうか?

当然のことながら、MINDSから出血性潰瘍診療指針をみると
1)吐血あるいはその他の上部消化管出血が疑われる所見がみられる例には全身管理を行い、循環動態を安定させた後、緊急内視鏡検査を行う。
2)緊急内視鏡検査により噴出性出血、湧出性出血、露出血管を有する胃潰瘍が認められれば、内視鏡的止血治療が選択される。
3)内視鏡的止血治療には各種の方法があるが効果にほとんど差はみられない。また、内視鏡止血に併せて内科的治療を行う。
4)外科手術の適応は内視鏡止血を行っても止血できない例である。
とあり、緊急的なantacid治療に関して言及されてない。


なぜ、わたしがこの文献にこだわるかというと、ある病院のバイト当直中吐血事例が搬送されてきて、消化器専門医を呼び出し処置してもらったのだが、なぜH2ブロッカーを点滴しなかったかと病院の経営者さいどの副院長が問い詰めてきた。その副院長H2RAの即効性の無いことを知らなかったようですぐさま反論すればよかったのだが、処置中で忙しかったこともあり、怒りを示せば良かったと、今でもくやんでいる(しつこい私の性格)。その後、H2RA投与に関する論文を集めたがやはり私の考えの方が当時の時流として正統であった。そういう経験からこの問題には注目しているのである。ちなみのその病院は相変わらずエビデンスに基づかない循環器診療を看板にしている・・・すくなくとも関わり合いにはなりたくない病院である。

cf)Gastroenterology Practice Guidelines(Medscape)

by internalmedicine | 2007-04-19 10:03 | 消化器  

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