高血圧と頭痛の関係

自覚症状の乏しい高血圧治療にくる患者さんになぜ来院したのかを聞いたとき、動脈硬化関連疾患のリスク減少と答える人はどの程度いるのでしょう?
最初は治療の目標が心血管リスクの減少とわかっていた人までいつの間にか“頭痛”の治療が最終目標に代わってしまった患者さんを多く経験します。


高血圧の自覚症状が現れないことが多く、米国では「サイレントキラー(静かなる殺人者)」といわれています。しかも、現れる症状は不定愁訴といわれる他の病気でも見られる症状のため、高血圧症だからといって現れる特徴的な症状が少ないのです。というのが一般的で・・・


教科書からみると・・・
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Harrisonsonlineによると通常の高血圧の多くは、特異的症状が無く、身体検査の過程でしか見出せない。
患者の症状として3つのカテゴリー(1)血圧自体の増加によるもの、(2)高血圧性血管疾患によるもの、(3)潜在する疾患(二次性高血圧症)によるもの と分類。
頭痛は唯一、重症の高血圧の時特異的で、多くの通常の血圧は朝方で、数時間で改善する。ふらつき、動悸、易疲労感、インポテンツ。血管性の変化による鼻血、血尿、網膜変化による霧視、だるさ、一過性脳虚血によるめまい、狭心症、心不全による呼吸困難など。大動脈解離による、あるいは、大動脈瘤切迫破裂などの症状もある。
二次性高血圧による基礎疾患関連症状は、多尿、多飲、低カリウム血症による筋力低下、体重増加、Cushingによる情緒的異常など。褐色細胞腫では発作性頭痛、動悸、発汗、体位性めまいなど
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高血圧緊急症のような重症の場合は
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Hypertensive Urgencies and Emergencies Prevalence and Clinical Presentation Hypertension. 1996;27:144-147によれば、高血圧“urgency”の場合の自覚症状は、頭痛(22%)、鼻出血(17%)、脱力感、心理運動的動揺(10%)で、高血圧“Emergency”の場合は胸痛(27%)、呼吸困難(22%)、神経学的異常(21%)である。
高血圧Emergencyの臓器障害の種類としては脳梗塞(24%)、急性肺水腫(23%)、高血圧性脳症(16%)だそうです。
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だそうです。


このうち、頭痛との関連について・・・・

Headache and Hypertension—Is There an Association?
Academic Emergency Medicine Volume 11, Number 5 521
【目的】血圧増加が頭痛や他の症状と関係しているどうかについて議論がある。
関係する要因を限定して、頭痛が高血圧(HTN)と関係するかどうかを検討する研究デザインをつくったもの
【方法】前向き交差研究、血圧と他の症状をMurse Countyで3ヶ月間
45歳の対象者を看護師チームが自宅、コミュニティーセンターで血圧検診
両側上腕血圧測定を様々な症状に従った質問の前後で行った。
看護師にも、参加者にもこの本当の目的をしらせない。24時間内の頭痛の頻度を血圧群で比較。多変量解析を年齢、性別、高血圧の病歴で補正。
【結果】4085名を検診。特徴は62±12歳、37.8%が女性、45%が高血圧既往、35%が降圧剤治療。収縮期血圧146 ± 25 、拡張期血圧86 ± 13 mm Hg
24時間以内の全般的頭痛頻度は27.9%
多変量解析モデルで、女性、年齢、HTN歴、現在の降圧治療、有意な血圧増加(収縮期血圧 180 or 拡張期血圧 110)は独立して頭痛と関連。補正Odds比は:年齢:0.991(95% CI 0.985-0.997)、女性 2.629 (2.241-3.084)、HTN歴・現在の降圧剤治療 1.919 (1.564-2.226)、血圧高値 1.576 (1.086-2.287)
偽りの症状としての熱発は相関無し。
【結論】頭痛は血圧増加、女性、高血圧既往、降圧剤使用と相関。頭痛の頻度は年齢と逆相関。
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Headache and cardiovascular risk factors: positive association with hypertension
Headache. 1999 Jun;39(6):409-16.
1343名の重症頭痛患者(男性399、女性944)、年齢15-64歳:性別、年齢、頭痛の種類・頻度のコントロール分析。頭痛の頻度は男女差があった。年齢、年あたりの頭痛日数は頭痛の形態の間で有意差がある。頭痛持ちの男女では年齢が高血圧、高コレステロール血症、肥満と相関。低頻度故に年齢による分析が糖尿病に対してはできなかった。喫煙に対しては男性では年齢に対して相関無しだが、女性では逆相関。年齢でコントロールしたとき、心血管リスクは頭痛の形態で有意な頻度の違いは、群発頭痛以外なかった。
偏頭痛の男性の間で、喫煙の頻度が高いが、高コレステロール血症に対しては低かった。年齢コントロールしたとき、男性喫煙を例外として、頭痛日/年は心血管リスクの頻度と相関無かった。対照を使用したサンプルで比較したところ、頭痛は両性とも、年齢と無関係に高い頻度となった (オッズ比 1.51, 95%CI 1.28 ~ 1.80)。頭痛群と対照の違いは年齢増加により低下した。頭痛を有する患者の高血圧の高頻度という現象は加重されたものではない。データによれば頭痛は有意に高血圧と相関するが、他の心血管リスクとは相関せず。
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2つの論文から頭痛とのつながりはやはり高血圧ではありそうです。ただ、降圧治療がうまくいった場合この症状が改善するかどうかは、前の論文でいけば“?”で、女性の場合は年齢が解決してくれるのかも・・・むしろ高血圧発見の黄信号ということで役に立つのかもしれません、

by internalmedicine | 2004-06-30 16:37 | 動脈硬化/循環器  

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