オーラルセックスと口腔咽頭がん・HPVウィルス感染

咽頭癌と、ヒトパピローマウィルス(HPV)感染、オーラルセックスと関連があることは次第に知られるようになってきた。より確実なエビデンスがNew Engl J med.で紹介されている。

日本の口腔がん・咽頭がん
罹患率、死亡率は、ともに男性のほうが高く、女性の約3倍。死亡率の年次推移は、1960年から2000年まで増加傾向


例のHPVワクチンとの関係が今後注目されるようである。



HPVの性感染はすべての頚部がんの実質的原因となる(下記NEJM論文から)。
 分子学的なエビデンスから、HPV、特にHPV-16の役割が支持され、頭頸部の扁平上皮がんのある一群でも病因となりえるという。
 頭頸部全扁平上皮がんの発がん性HPVDNAの存在は約26%だが、分子学的なエビデスンスは厳格で、一致性のあるもので、viral integrationとウィルス性の発がん遺伝子E6 と E7) の発現が示されている。

HPVと頚部癌の相関は高リスク性行為とHPV被爆・感染はほかのHPV原因のリスク増加をもたらすというあらたなるエビデンスが報告された。


Case–Control Study of Human Papillomavirus and Oropharyngeal Cancer
New Engl J Med. Volume 356:1944-1956 May 10, 2007 Number 19
HPV口腔内感染と口腔内咽頭癌の強い相関のpersuasive evidenceがもたらされた。性行為により口腔内へのウィルスが広がるということが示される。


生涯膣性行為パートナー数(26以上)は口腔咽頭癌と相関
(オッズ比 3.1; 95% CI 1.5 ~ 6.5)
生涯オーラルセックスパートナー数(6以上)は口腔咽頭癌と相関
(オッズ比 3.4; 95% CI, 1.3 ~ 8.8)

生涯膣性行為パートナー数、生涯オーラルセックスパートナー数の相関性が高い。
(P values for trend, 0.002 and 0.009, respectively)

口腔咽頭癌の相関
口腔HPVタイプ(HPV-16)とのオッズ比 14.6 95%CI 6.3-36.6)
HPV-16の37種類どれかとの相関オッズ比:12.3; 95% CI, 5.4 - 26.4)
HPV-16 L1 カプシド蛋白とのオッズ比:32.2; 95% CI, 14.6 - 71.3


HPV-16DNA検出は100のパラフィン包埋腫瘍切片の72%

HPV-16のoncoprotein E6、E7のいずれか陽性患者は癌の64%で血清陽性

HPV-16 L1 血清学的所見は重度喫煙歴やアルコール歴と相関がある(オッズ比 19.4 95%CI 3.3-113.9)で、たばこ・アルコール歴いずれもない場合はオッズ比33.6(95%CI 13.3-84.8)。たばこ・アルコール歴にかかわらず口腔HPV-16感染との相関が同様である。

故に、たばこ、アルコール、両者ともHPVと口腔咽頭癌への関連を強くするものではなかった。



口とりというオーラルセックスのは江戸時代からあったようだが、さほど盛んであったとは思えない行為が一般的になったのはアダルトビデオのためか?
USでは1973年以来扁桃および舌根のがんが増加増加し、十代のオーラルセックスの増加がこの原因として考えられるとのこと
HPV-16感染の予防にワクチンが有効なら今後アメリカではこの病気の減少がみられることだろう。


アメリカではculture warの様相を呈しているとのことでなかなか難しい局面もあるようである。
頸部癌の70%の原因とされるHPV種の感染予防に有効であるGW社のCervarixの導入に関してもCDCで11歳・12歳以上のワクチン接種推奨しているが、なかなか州によっては難しい問題を含むようである。

(New Engl J med. Volume 356:1905-1908 May 10, 2007 Number 19 )

性の乱れと性行為の若年化はだれも否定する人はいないだろう。

HPVワクチンの日本での導入が遅れたらどうなるか?そらおそろしくなる。




※ "日本のHPVのタイプは16が少ないので、16用に作られたワクチンは効果がない、という風に記憶していたのですが、違いましたでしょうか? "というコメントをいただきました。
貴重なご指摘ありがとうございます。日をいただいて、付記したいと思います。


ちょっと調べたところでは、口腔内病変においては中国・日本でもやはり検出頻度が高いとありました。
Comparative study of HPV prevalence in Japanese and North-east Chinese oral carcinoma
Journal of Oral Pathology & Medicine Volume 32 Issue 7 Page 393 - August 2003

by internalmedicine | 2007-05-11 09:15 | 感染症  

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