感染性心内膜炎予防投薬のAHAガイドライン改訂

遅ればせながらの紹介となる・・・歯科の先生たちの方がむしろ注目してたようでネットに多く掲載されている。

Journal Watchに、感染性心内膜炎の抗生剤予防投薬の適用範囲を制限されている新しいAHAのガイドラインが掲載されている。


この推奨は、IEへの一定リスクをもつ患者の標準治療を分類した歓迎すべきもので、抗生剤抵抗性に頻度増加、特にペニシリン、バンコマイシン、アミノグリコシド類の抵抗性細菌の増加のため、以前のガイドラインがもはや意味を持たなくなったこと

心臓科医や患者がこの変化になじむまで時間がかかるだろう。しかし、消化器医は、この推奨の変化に、早急に注意すべきであろうとのこと


Prevention of infective endocarditis: Guidelines from the American Heart Association. A Guideline from the American Heart Association Rheumatic Fever, Endocarditis, and Kawasaki Disease Committee, Council on Cardiovascular Disease in the Young, and the Council on Clinical Cardiology, Council on Cardiovascular Surgery and Anesthesia, and the Quality of Care and Outcomes Research Interdisciplinary Working Group.
Circulation 2007 Apr 19

(1) 予防的治療が100%有効であったとしても歯科処置の抗生剤予防はきわめて少数しか感染性心内膜炎を予防しないと委員会は結論
(2)  歯科処置の感染性心内膜炎予防は感染性心内膜炎となるアウトカムリスクが高い心臓疾患を基礎と持つ患者のみ推奨されるべき
(3) 心臓基礎疾患をもつ患者では、歯肉組織処置や歯根尖端周囲、口腔粘膜穿孔をもたらす、すべての歯科処置で予防を推奨する(4) 予防は感染性心内膜炎の障害リスクが増加するという理由だけで推奨されるべきではない
(5) 抗生剤投与は、感染性心内膜炎予防のためだけのための、生殖器、胃腸への処置患者では推奨されるべきではない。




50年以上前から、感染性心内膜炎(IE)への標準として、リスクのある患者へ、胃腸内視鏡検査前の抗生剤予防投与が行われてきている。しかし、AHAの長期的観点からの推奨ではこれを支持するエビデンスが少ないとのことである。

血中の病原体と心内膜細胞ダメージへの標的部位の複雑な関連がある。この相関は非細菌性血栓の形成を通して、細菌血症および細菌の血栓への接着を生じ、vegetation内の細菌増殖を生じる。歯科、GI,GU処置施工時からの溶連菌、腸球菌の遊離そして、IE発症の報告があったが、高度リスク状態の患者をのぞいて、エビデンスを見いだすことができなかった。
高度リスク患者は、人工弁、IEの既往、うっ血性心不全の特定の病態、弁置換術を伴う心臓移植である。歯科や内視鏡主義よりも、歯磨き、排便などの毎日の生活行為の方がより危険性が高いくらいであると結論づけられている。
IEとGI、GU手技の関連の信頼できるデータがないということで、IE予防のためだけの内視鏡や大腸内視鏡施行時の抗生剤投与は推奨されないということである。
CABGや冠動脈ステントへの予防投薬のエビデンスもないと解説されていることも注目されるべきで、人工関節への予防投与に関してはこのレポートの範囲外ということも考慮すべき

by internalmedicine | 2007-07-21 11:41 | 感染症  

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