特定検診・指導のシンボル “メタボ侍” 運動療法中死亡

記事なので詳細は分からないが、この事故は来年からの特定検診に対するアラームであり、国の愚かで浅はかな、保健行政による尊い犠牲者という側面もあると感じている。

来年から、保健師主導で、メディカルチェックを飛び越して一律の運動指導がなされるのである。一種の国家的統制運動指導がなされようとしている。個別化された運動指導の対極にあるものであり、日本全体でいえば、こういうリスクは想定できるものである。

もともとこの“メタボリック・シンドローム”は医療削減だけが目的で、医師関与をきわめて嫌う制度で、リスクのある対象者への配慮がなされていない。具体的には、虚血性要因のある場合、負荷心電図などでチェックがなされ、最大酸素摂取量予測やリスク層別化による運動指導の個別化があって、安全で有効な運動指導が初めてできるといえるのにそれは無視しているのである。




それにしても、この不幸な事例は、おそらくこの課長の労災認定・・・・もめる可能性があると思う。



特定検診・特定保健指導のしくみ( pdf )から、運動療法のリスクを無視した国のやり方が垣間見える


特定検診・指導のシンボル “メタボ侍” 運動療法中死亡_a0007242_8365855.jpg


ほとんどの場合、リスク層別化どころか、1回の保健師の指導だけで・・・運動を強要するシステムなのである。

特定健診・特定保健指導は、国民に周知されているのであろうか? 単純に国が”メタボリック対策”として指導しているありがたい制度と思っている人が大部分ではないだろうか?
この制度が生活習慣病に対する厚労省の医療負担切り捨てに使われるであろう危険性と、あいもかわらず事前検討の少ない(リスク・ベネフィット調査根拠の少ない)机上の空論のごり押しということを多くの人はご存じだろうか?


・厚労省は、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を個人の責任として、保険給付から外す、あるいは、保険給付比率を減じようという意図があるのではないかという噂があるのである。・・・この噂を信じれば、教授様方が利己的な名誉心のため国民皆保険制度崩壊に寄与しているともいえるのである。東北大学の先生はそれに準じた報告
( メタボリックシンドロームの危うさ・怪しさ )

・6月に成立した医療制度改革関連法に、健診率を引き上げて糖尿病などの生活習慣病 を減らし、医療費を抑制する対策が盛り込まれたが、専門家らから効果に疑問の声が上 がっている。
( 健診で医療費抑制に疑問 生活習慣病対策に専門家ら 「特集」医療制度改革 )






心疾患における運動療法に関するガイドライン
Guidelines for Exercise Training in Patients with Heart Disease (JCS 2002)( pdf )
運動療法の一般的原則
I.運動療法における患者選択とリスクの層別化
1.メディカルチェック
2.運動負荷試験
心疾患を有する症例,胸痛・息切れ・間歇性跛行などの心血管疾患の症状・徴候を有する症例,糖尿病や高脂血症などの冠危険因子保有者では,運動療法開始前のメディカルチェックとして運動負荷試験が必要である.

3.生活習慣病に対する運動療法
4.心疾患における運動療法


II.運動処方の一般的な原則
運動処方の構成要素として,1)運動の種類,2)運動強度,3)運動の継続時間,4)運動の頻度,5)身体活動度の増加に伴う再処方,の5 つがあげられる

III.心疾患患者における運動時の一般的注意
a)気分がよいときにのみ運動する,b)食後すぐに激しい運動をしない,c)天候にあわせて運動する,d)適切な服装と靴を着用する,e)自分の限界を把握する,f)適切な運動を選択する,g)自覚症状に注意する,などの注意が必要である.



来年からの特定健診ならびにその後の指導・・・決して私ら開業医は近づきたくないリスクてんこもりである。
健診・保健指導の研修ガイドライン (確定版)について( PDF )

メタボリックシンドロームが疑われているのなら、心疾患リスク例であり、運動療法前のメディカルチェックが指導あるいは推奨されなかったのか・・・争点となりそうである。

記事羅列するが、“同市の中北幸男健康福祉部長は「亡くなったことは痛恨の極み」としながら「死亡と減量の因果関係はなく、減量のために運動すること自体は健康に良い行為」と述べた。同市は企画を継続し、予定通り、10月11日に減量の成果を市民に公表する方針という”・・・・このコメントは、あまりに非常識では?




「メタボ」解消作戦参加の伊勢市課長、運動中に急死
 三重県伊勢市で、生活習慣病予防のために、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と疑われる市長ら幹部職員7人による減量作戦に参加していた男性課長(47)が運動中に死亡していたことが17日、わかった。

 死亡したのは、市生活支援課長奥野睦司さん。奥野さんは夏休みだった14日午前9時10分ごろ、同市の自宅近くの道路で倒れていた。通行人が見つけ、救急車が出動したが、奥野さんはすでに死亡していた。死因は急性虚血性心疾患。午前7時ごろ家を出て、ジョギング中に倒れたらしい。歩数計は3500歩を示していた。

 市は7月から、市職員が率先して肥満予防に取り組もうと、「7人のメタボ侍、内臓脂肪を斬(き)る」と銘打ち、市長ら、腹囲85センチ以上の部課長級職員のうち7人がそれぞれ減量目標を立て、10月に成果を公表することにしていた。

8月17日13時44分配信 読売新聞 最終更新:8月17日13時44分


市長発案の「減量作戦」参加の課長、運動中死亡 三重
 三重県伊勢市で、市長ら幹部7人が市民に宣言して取り組んでいた減量作戦に参加していた課長の男性(47)が、運動中に倒れて死亡していたことが分かった。伊勢署はジョギング中に突然死した可能性もあるとみている。

 同署などの調べでは、課長は休暇中の14日午前7時ごろ、Tシャツと短パン姿で外出。午前9時10分ごろ、自宅近くの路上で倒れているのを通りかかった人が見つけたが、死亡していた。死因は急性虚血性心疾患で、運動中に心臓が止まった可能性が高いという

 減量作戦は、肥満予防PRのため、森下隆生市長が発案。「7人のメタボ侍、内臓脂肪を斬(き)る!」と題し、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が疑われる部課長6人と7月11日に開始。10月に成果を発表する予定だった。

 市健康課によると、課長は身長が175センチ。減量前の体重は82キロ、腹囲100センチだった。当初は「腹囲10センチ減」を目標に掲げたが、7月中旬に面談した保健師が急激な減量をいさめ、「3カ月で腹囲4センチ減、体重4キロ減」に修正した。

 森下市長は「まじめな性格で、仕事もコツコツする方だっただけに、つらい」と話している
2007年08月17日06時08分 朝日新聞



伊勢市職員、メタボ解消で減量中に死亡

 三重県伊勢市で「七人のメタボ侍 内臓脂肪を斬(き)る!」と題して市幹部らが減量に挑戦する企画に、市長らとともに参加していた同市健康福祉部の男性課長(47)が、運動中に倒れ死亡していたことが17日、分かった。

 伊勢署などによると、課長は休暇中の14日午前9時10分ごろ、Tシャツと短パン姿で自宅近くの路上に倒れているのを通行人に発見されたが、既に死亡していた。死因は虚血性心不全で、ジョギングかウオーキング中だったとみられる。

 この企画は生活習慣病予防をPRするため森下隆生市長(57)が発案。メタボリック症候群の疑いのある幹部7人が、保健師から食生活や運動のアドバイスを受け、減量に挑んでいた。課長は腹囲が100センチあり、「10センチ減」を目標としていたが、保健師に急激な減量をいさめられていたという。

 同市の中北幸男健康福祉部長は「亡くなったことは痛恨の極み」としながら「死亡と減量の因果関係はなく、減量のために運動すること自体は健康に良い行為」と述べた。同市は企画を継続し、予定通り、10月11日に減量の成果を市民に公表する方針という。

Nikkansports.com [2007年8月17日12時0分]



脱メタボ作戦中の市課長が急死・三重、休暇で運動中に
 三重県伊勢市で「7人のメタボ侍 内臓脂肪を斬る!」と題して市幹部らが減量に挑戦する企画に、市長らとともに参加していた同市健康福祉部の男性課長(47)が、運動中に倒れ死亡していたことが17日、分かった。

 伊勢署などによると、課長は休暇中の14日午前9時10分ごろ、Tシャツと短パン姿で自宅近くの路上に倒れているのを通行人に発見されたが、既に死亡していた。死因は虚血性心不全で、ジョギングかウオーキング中だったとみられる。

 この企画は生活習慣病予防をPRするため森下隆生市長(57)が発案。メタボリック症候群の疑いのある幹部7人が、保健師から食生活や運動のアドバイスを受け、減量に挑んでいた。課長は腹囲が100センチあり、「10センチ減」を目標としていたが、保健師に急激な減量をいさめられていたという。〔共同〕(12:31)

by internalmedicine | 2007-08-17 15:05 | 動脈硬化/循環器  

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