1ヶ月齢時点の細菌コロナイゼーションと5歳時喘息頻度


小児の喘息は通常繰り返す喘息様症状("recurrent wheeze")が先行する。このよく見られる表現型は早期喘息によるものあるいは自己完結型ですむウィルス関連症状として現れているのかもしれない。こういった病態の臨床所見の臨床的に区別することは困難である。重症の繰り返す喘鳴と可逆性の気道閉塞を有する乳児の生検標本にて、アトピーの存在があっても網状基底膜の肥厚もなければ好酸球炎症の存在もない場合があり、後に喘息となる場合がある。繰り返す喘鳴がある若年児のBALはマクロファージや好中球数増加があるが、好酸球やマスト細胞増加がない。こういったことから、若年児の気道疾患が細菌のコロナイゼーションと関連有るのではないかという仮説が打ち立てられた。

Copenhagen Prospective Study on Asthma in Childhood (COPSAC)という研究である。hypopharyngeal colonization、すなわち下咽頭部分のコロナイゼーションについて検討したものである。


デンマークの喘息リスクの高い子供のコホート研究、生後1ヶ月での気道の肺炎球菌・Moraxella catrrhalis、インフルエンザ桿菌、或いはこれらの気道コロナイゼーションは5歳時点での喘息発症と関連したが、黄色ブドウ球菌とは相関がなかったというもの

Childhood Asthma after Bacterial Colonization of the Airway in Neonates
N Engl J Med Volume 357:1487-1495 October 11, 2007 Number 15

321名の1ヶ月齢
21%において肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、両者の組み合わせのコロナイゼーション

黄色ブドウ球菌以外の1つ以上のコロナイゼーションがある場合持続性喘鳴 (HR, 2.40; 95% confidence interval [CI], 1.45 to 3.99)、喘鳴急性悪化 (HR, 2.99; 95% CI, 1.66 to 5.39)、喘鳴による入院(HR, 3.85; 95% CI, 1.90 to 7.79)と相関有り

しかし、特異的なIgEは有意な影響は与えなかった。

5歳時点での喘息の頻度、β2アゴニスト投与による気道抵抗の可逆性の頻度は乳児期の最近コロナイゼーションある場合増加(33% vs. 10% and 23% vs. 18%)



小児喘息の気道炎症理論に関する議論材料が増えたわけである。こと小児喘息に関しては、いわゆる衛生仮説はあまりに乱暴な意見ということになるのだろうか?


・1ヶ月齢時点で黄色ブドウ球菌コロナイゼーション61%、肺炎球菌・M.catarrhalis・インフルエンザ桿菌コロナイゼーションは21%
・12ヶ月齢時点で逆転して、黄色ブドウ球菌13%、肺炎球菌・M.catarrhalis・インフルエンザ桿菌コロナイゼーションは71%

by internalmedicine | 2007-10-11 08:37 | 呼吸器系  

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