安定狭心症の管理アンケート結果からみた日本の特殊性

安定狭心症をいかにマネージメントするか?
NEJM誌がケースプレゼンテーションをして、全世界にそのインターラクティブな調査を行った。
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Management of stable coronary disease. N Engl J Med 2007;357:1762-1766. [Free Full Text]

65歳男性、高血圧、肥満、2型糖尿病で5年間診療していた。
服薬として、hydrochlorothiazide(25mg/日)+metformi(500mg ×2/日)
血圧は130/82mmHg、BMI 32
HbA1c 7.5%冠動脈疾患と最近診断され、その相談にあなたのクリニックにやってきた

2週間前、2区画歩行後胸部症状("tightness)と息切れを自覚、安静にて2-3分で改善。


Bruceプロトコール・トレッドミル運動負荷試験、心筋血流画像を行った。患者は8分間運動を行い胸部圧迫感・呼吸苦にて終了。最大収縮期血圧は160mmHg、最大心拍は140/分
心電図前壁側壁誘導にてST1mm低下、血流シンチでは一定した血液潅流欠損が前壁に中等度、前壁側壁にに中等度可逆性の欠損

心臓カテーテルで多枝冠動脈病変(LAD第1diagonal枝の閉塞とLADのmidportionの70%狭窄、左回旋枝石灰化病変をともなう80%狭窄、後下枝50%狭窄)

前壁の左室運動性低下と左室駆出率45%


以上のケースに対して、あなたは主治医として患者の治療管理に対してどうアドバイスしますか?


1)適切な薬物療法とadherenceと効果性をみながら厳格なフォローアップ2)適切な薬物療法とPCI
3)適切な薬物療法とCABG


PCI:経皮的冠動脈カテーテル手術
CABG:冠動脈バイパス術



私が見た時点では
日本(27)は、1)29.58%、2)39.44%、3)30.99%
アメリカ(2830)は、1)42.23%、2)17.63%、3)40.14%
英国(209)は、1)43.06%、2)14.83%、3)42.11%
ドイツ(185)は、1)47.03%、2)23.78%、3)29.19%
フランス(74)は、1)32.43%、2)27.03%、3)40.54%
ロシア(11)は、1)63.64%、2)9.09%、3)27.27%
中国大陸(88)は、1)45.45%、2)27.27%、3)27.27%



7632投票中の43%、3282で、まず適切な薬物療法、そして厳重な経過観察(adherenceと効果を見ながら・・・)というのが多かった。
次点は僅差で、40.2%、3066投票は、適切な薬物療法を即刻開始とCABGを患者に勧めることであった。

Management of Stable Coronary Disease — Polling Results
November 28, 2007 (10.1056/NEJMclde0707875)


日本の比率は、その投票率の低さから実態を反映してない可能性があるが、わたしの周囲の雰囲気からすればPCI優先というのは事実かも知れない。となると、世界的趨勢からかなり逸脱していることとなる。

日本のPCI技術の優秀性は疑わないが、それでよいのか?・・・日本の循環器医師やプライマリケア医師は自問が必要だろう。

by internalmedicine | 2007-11-29 09:07 | 動脈硬化/循環器  

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