60歳以上にとっては心肺フィットネスは死亡率にとって重大・・・肥満状況より?

過体重・肥満の頻度は急増しているが、このadiposity、特に中心性肥満・内臓肥満の増加は心血管・冠動脈疾患、2型糖尿病など予後推定因子である。メタボリックシンドロームはそれ自体が定義の一部に含まれるので因子としてリストに記載されることとなる。運動量・健康増進運動を増やすことで内臓脂肪増加に伴う炎症を減少させるかもしれないという仮説。若年者では2型糖尿病発生やブドウ糖・インスリンメカニズムの改善をもたらすというエビデンスが集積してきた(American Journal of Lifestyle Medicine, Vol. 1, No. 6, 437-446 (2007))。


従来より"fitnessとfatnessどちらが生命予後にとって重要なのか?"というのを知りたいところもあるが、Crespoらの研究(Annals of Epidemiology Volume 12, Issue 8, November 2002, Pages 543-552 )のニュースでは運動が肥満・過体重という事態より重要と書かれている。・・・はたしてそうなのだろうか? 当時では、体を動かさないことが過体重と運動量を同時に死亡率に対する影響を考慮した初めての研究といって良いらしいということ。それで、死亡率への独立した影響を調べたもの結果であった。


さて、本論・・・・老人の運動能力というのは非常に重要で、喫煙、基礎的な健康状態、BMI,ウェスト周囲径、体脂肪などの影響よりも重要かもしれないという報告。
かれは、この研究に対して、"運動しないことは、全原因死亡率の重大な予測因子であり、運動をした過体重のひとは運動をしないひとよりそのリスクを減少させる。We encourage individuals not to evaluate their exercise program on pounds of body weight lost, but to engage in a regular exercise program for their general health. Exercise is good for all persons, regardless of their body weight."



Suiらは、60歳以上の心肺運動性とadiposityの死亡率に関わる独立した関連と結合した関連を調査し、平均12年フォローアップにて低心肺運動性は全原因死亡率の有意な予測因子となり、包括的、腹部adiposityとは独立した要因であった。

身体活動性と好気的運動能力は年齢とともに衰弱し、年齢とともに肥満頻度が増加するが、老人におけるfitness( 後述から斟酌すれば、心肺機能を中心とした運動機能)、adiposity、死亡率の独立性、相互性は適切に評価されていない。

Cardiorespiratory Fitness and Adiposity as Mortality Predictors in Older Adults
JAMA. 2007;298(21):2507-2516.

60歳以上の(平均64.4歳 SD 4.8、女性比率 19.8%)の2603名の成人コホート
1979-2001年のベースライン健康検査データにもとづくAerobics Center Longitudinal Study

最大運動試験によるfitness 評価、adiposityはBMI,ウェスト周囲径、体脂肪比率で評価
低fitnessは、最大トレッドミル運動中の性特異的な分布の最低5分位と定義
BMI、ウェスト周囲径、体脂肪比率を臨床ガイドラインの分析によるグループ分け

主なアウトカム測定:全原因死亡率(2003年12月31日)

平均12年フォローアップ、31236人年で450の死亡事例

1000人年あたりの死亡率は年齢、性別、調査年補正で
・BMI群増加(18.5-24.9, 25.0-29.9, 30.0-34.9, 35.0-)で、それぞれ、13.9, 13.3, 18.3, 31.8(P = .01 for trend)

・ウェスト周囲径増加(女性 88cm、男性 102cm)で、それぞれ、13.3 、 18.2 (P = .004)

・パーセント体脂肪比率増加(女性30%、男性25%)で、それぞれ13.7 、 14.6 (P = .51)

・fitness5分位増加事に、32.6, 16.6, 12.8, 12.3, 8.1 (P < .001 for trend)



喫煙、ベースラインの健康状態、BMI補正後もウェスト周囲径と死亡率の相関は維持(P = .02) したが、fitness追加補正にてその相関解消 (P = .86)

fitnessは喫煙、ベースラインの健康状態、BMI、ウェスト周囲径、体脂肪比率補正後もリスク維持(P < .001 for trend)


Crespoの論文ニュースの解釈で言えば、「肥満より心肺運動がより寿命にとって重要」となるのかもしれないが・・・そういう断言はここでは控える。

それにしても、国が介護保険支出を減らすためと言いながら、特定業者と結びついたパワーリハなんてアホなことをしてたが、そんな馬鹿なことを言わず、純粋に、国民総フィットネス推進にすすむべきだったのではなかろうか・・・今からでも遅くないし・・・

by internalmedicine | 2007-12-05 11:11 | 動脈硬化/循環器  

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