学習性無力感:気分を調整する分子

気分障害に関する分子メカニズム仮説が提唱され、創薬などに期待が持てるらしい

Molecules That Mediate Mood
N. Engl. J. Med. Vol. 357:2400-2402 Dec. 6, 2007 No. 23

Bertonらの仕事で、 学習性無力感(learned helplessness)に関する分子の研究で、最信頼性のある動物モデルとして嫌悪刺激回避不能な状況下の動物実験に置いた状況を設定。
時間経過とともに受動的行動レパートリー適応による"損失回避”を学習。その行動は状況変化や回避可能となった後も一定時間継続するのである。学習性無力感の発症には、個体差とともに、属・種特異的な違いがある。特定の動物はより継続(回避行動継続)するが、他はすぐ回復(回避後短時間しか無力感継続しない)する。


この学習性無力感に関して、脳内の特定部位でのtranscription factor ΔFosBの誘導が関連、縫線核背側(セロトニンの脳内主要供給源)、青斑核(ノルエピネフリンの脳内主要供給源)、腹外側中脳水道周囲灰白質(疼痛認知必須部位で、neurokini-1受容体内因性アゴニストである神経ペプチド神経伝達物質Substance Pを豊富に含む部位)が関係する。



ΔFosBをencodeした遺伝子を含むウィルスベクターの脳内注入
          ↓
     不可避ストレス
          ↓
・腹外側中脳水道灰白質におけるSub Pのtranscription→NK1受容体に対するSub P結合がGABAergic neuronを活性化→学習性無力感
・ΔFos B結合がSub P遺伝子のpromoterと結合し、transcription阻害→学習性無力感抵抗性、早期回復


わたしゃ、「気分障害」ってのが認知されてないものだから、「normal sadness」と区別されず、「うつ」と認識された、かなりのmisconceptionが広がってると見ている。すなわち、「気分障害」は正常の悲しみから上機嫌までの正常変動の範囲を超えたものであり、合併症や死亡にさえ寄与するものである。ref . http://www.surgeongeneral.gov/library/mentalhealth/chapter4/sec3.html)
うつなのにテレビゲームをしたり、カラオケに行ったりするような行為は通常あり得ないはず・・・

by internalmedicine | 2007-12-06 11:33 | 医療一般  

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