オゾン、 オキシダント防御遺伝子、青年喘息発症リスク

喘息の発症要因としての、環境要因と遺伝要因を考える上で、興味ある報告だと思う。総論的に喘息は環境と遺伝といいうのは簡単だが、それでは、本質はいつまでも見えてこないだろう。
興味あることに、環境汚染がひどい場合は、遺伝的要因を凌駕してしまう可能性が報告された。

Ozone, Oxidant Defense Genes, and Risk of Asthma during Adolescence
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 177. pp. 388-395, (2008)

oxidative stress(酸化ストレス)は喘息の基本的側面であるが、過酸化大気汚染物質、過酸化遺伝子ヘムoxygenase 1(HMOX-1)、カタラーゼ(CAT)、manganese superoxide dismutase (MNSOD) の喘息の病因としての役割は不明
仮説として、HMOx-1([GT]n、MNSOD(Ala-9Val)が新規発症喘息と関連があり、この変異の影響はオゾン、すなわち強力な大気汚染物質により影響を受けるという仮説
【方法】住民ベースの非ヒスパニック系(n=1125)/ヒスパニック系(n=586)の子供、12のカリフォルニアの地域に居住し、8年間年ごとにフォローしたコホート研究
【測定・主な結果】8年の研究フォロー期間大気汚染を持続的に測定
HMOX-1 "short" alleles (<23 repeats) は非ヒスパニック系白人新規発症喘息と関連
(hazard ratio [HR], 0.64; 95% 信頼区間[CI], 0.41–0.99)
この防御的効果は低オゾン地域居住の子供で最も大きい(HR, 0.48; 95% CI, 0.25–0.91) (interaction P value = 0.003)
ヒスパニック系の子供ではHMOX-1との関連が少ない。逆に、ヒスパニック系の子供ではCAT-262 "T" allele (CT or TT)が喘息リスク増加と関連(HR, 1.78; P value = 0.01)
この多様性の影響は個人の喫煙・受動喫煙により修飾されなかった


【結論】
CAT、HMOX-1の機能的促進変異により民族特異的に喘息新規発症に関係する
oxidant 遺伝子防御機転が低オゾン環境居住中の子供にのみ限定して働いているものと思われる。


 ↓

ということは、環境暴露がひどすぎる場所は遺伝的要因より環境要因の方が影響がでかい可能性がある。




HMOX-1:
フェリチン、heme oxygenase 1、glutamate cysteine ligase、glutathione transferaze、quinone reductase、aldo-keto reductase、UDP-glucuronosyl transferaseといったものもcytoprotective enzymeとしてはたらく。Heme oxygenase (HO) はヘムを分解し, ビリベルジン, 一酸化炭素, 鉄を生成する反応を触媒する酵素である。heme oxygenase 1は、ヘムを開裂してbiliverdinを生じ、biliverdinはその後、biliverdin reductaseによってビリルビンに変換される。biliverdinもビリルビンもフリーラジカルscavengerとしてはたらく。


Manganese Superoxide Dismutase (MnSOD)
2O2-. + 2H+ Þ O2 + H2O2


by internalmedicine | 2008-02-05 10:53 | 呼吸器系  

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