患者の意志決定補助ツールとしての情報提示方法:過ぎると混乱をもたらす

この論文、著者らの結論に反するが、1)あまりに情報が複数あると意志決定に混乱をもたらす、2)教諭的な示唆が意外に効果がある・・・という2点が導き出されておもしろい。パターナリズムの批判はもっともだが、あまり情報伝達が過ぎると意志決定に混乱をもたらすこととなるという印象をもつ。


この論文の序文・・・
意志決定選択に関わる情報提供推奨は意味のあることであるとされる。前立腺癌検診に関わる教育を受けた男性は平均20分を超える診療時間で容易である。
意志決定手出すかは、患者の選択をadvocateなしに様々な診断・治療方法の利点、難点を記載するツールである。Cochrane reviewは意志決定手段により患者の知識を増やし、より現実的な期待に変わり、意志決定困難さを減らすこととなると説明している。
しかし、このdecision aidの利用が有益というエビデンスにかかわらず、臨床での利用程度は少ないままである。インターネットはクリニック外での患者教育に導くdecision aidとなるだおう。アメリカでは73%がインターネットにアクセスできる環境にある(日本では携帯電話を含めば6894万人のインターネット人口)。


この検討対象は前立腺癌である。PSA検診するべきかどうか曖昧な中、多くの医療専門家グループが意志決定選択に関わる情報提供を行っている。しかし、コンセンサス委員会での警告に反して、潜在的なベネフィットが少ない人達に、pros と consの議論無しに検診を多く受けることとなっている。

Han PK, Coates RJ, Uhler RJ, Breen N. Decision making in prostate-specific antigen screening National Health Interview Survey, 2000. Am J Prev Med. 2006;30(5):394-404.

Walter LC, Bertenthal D, Lindquist K, Konety BR. PSA screening among elderly men with limited life expectancies. JAMA. 2006;296(19):2336-2342.


Internet Patient Decision Support
A Randomized Controlled Trial Comparing Alternative Approaches for Men Considering Prostate Cancer Screening
Arch Intern Med. 2008;168(4):363-369.


50歳超の男性(N=611)をランダムに、インターネット状況1-4に割り付ける

2×2要因デザインで、4群にわけ、
要因1は、伝統的なdidactic decision(教諭的決定を導くもの)で、要因2は慢性疾患のtrajectory modelで、前立腺癌検診を受けなかったことのQOL、寿命への影響を比較して前立腺癌のlife courseを説明してアウトカムへのユーティリティーを説明して患者に決定を促すもの
介入はtime-trade-off exerciseと前立腺癌trajectoryのVASを完遂。

American Cancer Society and the Centers for Disease Control and Preventionの公的ウェブサイトにあるものにリンクするのを対照とする

故に以下の4群に分類
(1) 従来の意志決定補助:traditional decision aid (TDA)
(2)慢性疾患trajectory model (DTM)
(3) TDA+DTM併用
(4)対照群


ベースラインと身体所見検査後の患者アンケートを行う。
プライマリアウトカムはPSA検査の選択、前立腺癌治療の嗜好、前立腺癌の知識、意志決定抵抗


実験的な試みに比べて、publicなウェブサイト閲覧のみでは、情報レビューすることが少ない。

pretest/posttestのPSA検診の減少は伝統的な教諭的なもの(–9.1%)や、慢性疾患trajectory model(–8.7%),ではその減少程度が、対照群(-3.3%)と併用群(-5.3%)より大きかった(P = .047)

PSA検診の減少


4群全てでwatchful waitinを選択する傾向が多くなった(baseline, 219 [35.8%]; follow-up, 303 [66.2%]; P < .001)

前立腺癌についての関心(PSAを選択するか否か)

知識スコアはpublic Web site閲覧割り当て群が一番乏しく(mean [SD] score, 7.49 [0.19] of questions correct) 、伝統的な教諭的方法が最も高かった (8.65 [0.18] of questions correct; P = .005)。


decision conflict



“何を選択したらよいかわからなくなる(decision conflict)”という状態が“chronic disease trajectory mode”のような一見合理的な方法で逆に増加したというのが教訓的でおもしろいと思う。

by internalmedicine | 2008-02-26 11:07 | がん  

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