原著と定義の異なる“Masked Hypertension"の英文論文

逆白衣高血圧(仮面高血圧)と翻訳される“Masked Hypertension”・・・本来は持続血圧計を用いた概念であり、日本のJSH2004で採用された血圧スポット測定をベースにした“仮面高血圧”と、Thomas G. Pickeringらの提唱したオリジナルなMasked Hypertensionとは異なるものなのである。

ゆえに、日本人著作あるいは日本人のエディターのいる雑誌に、"Masked hypertension"と記載された論文があるときは注意が必要
である。

参考:JSH2004の問題点 2005-01-06 17:42


元来、”仮面高血圧”≠”Masked Hypertension”なのだ。仮にABPM以外の血圧測定にて論文を書きたいのなら、そういう注意書きが必要であり、根幹にかかわる問題なので、要約にもそれが書かれるべきと私は思う。

Masked Hypertension: Subtypes and Target Organ Damage
Clinical and Experimental Hypertension, Volume 30, Issue 3 & 4 April 2008 , pages 289 - 296
仮面高血圧は無治療・受療者ともに認められ、治療目標臓器障害と関係し、心血管予後不良とも相関するため注目が集められている。
“masked hypertension”とは普段の血圧測定・家庭内血圧測定にて血圧正常だが、診療所では正常というのが定義
早朝高血圧が、下面高血圧の最も多い原因で、本来の日内変動により生じ、夜間飲酒、短期持続性降圧剤により生じる。
昼間高血圧は、習慣的喫煙といったライフスタイル、心的・身体的ストレスにより生じる。
夜間高血圧に関しては、non-dipping status、高塩分摂取、腎機能、肥満、睡眠時無呼吸、自律神経障害といった要因がある。
左室容積、頸動脈IMT、尿中アルブミン排泄量といった治療目標臓器障害は、masked hypertension未治療者・治療者ともに出現する。
この逆白衣高血圧現象(reverse white-coat effect)が治療高血圧患者の臓器障害の指標と関連することを見出した。仮面高血圧患者を同定することは重要。



とにかく、“仮面高血圧”という概念における血圧測定判定要件は、厳格に定義されるべきであるだろう。定義をあいまいにして・・・科学も何もあったものではない。

それと、一部循環器科医師の、office hypertensionを職場高血圧と混同するような著作、スピーチを即座にやめてほしいと4年たっても治らぬ現状・・・

by internalmedicine | 2008-04-22 09:15 | 動脈硬化/循環器  

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