低PEEPも高PEEPも臨床的アウトカムは同じ

人工呼吸設定に影響をあたえる論文


──────────────────────────────────
Higher versus Lower Positive End-Expiratory Pressures in Patients with the Acute Respiratory Distress Syndrome

The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network
NEJM Volume 351:327-336 July 22, 2004 Number 4 【背景】人工呼吸を要する多くの急性肺障害やARDS患者ではPEEPを5-12cm水柱を必要とする。高PEEPで酸素化を改善し、人工呼吸誘起性肺障害を減少するなだが、循環系への抑制を生じ、肺の伸展性にて肺障害を助長する可能性もある。
高PEEPと低PEEPの臨床的アウトカムへの影響を比較。
【方法】人工呼吸受けている急性肺障害・ARDSの549名をランダムに低あるいは高PEEP値を割り当て、PEEPとFIO2の事前決定的な組み合わせテーブルの設定に従うもの
Volume assist/control
1回換気量:6ml/kg(予測体重)
plateau-pressure goal 6-35 pH>=7.30(可能なら)
吸気:呼気比:1:1-1:3
目標 PaO2 35-80mmHg SpO2 88-95%
Weaning:PEEP<=8cm水柱でFiO2<=.40で許容される動脈血酸素値がpressure supportでとげられたとき

低PEEP群
FiO2 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.6 0.7 0.7 0.7 0.8 0.9 0.9 0.9 1
PEEP 5 5 8 8 10 10 10 12 14 14 14 16 18 18-24
高PEEP群(before protocol changed to use higher level of PEEP)
FiO2 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5-0.8 0.8 0.9 1
PEEP 5 8 10 12 14 14 16 16 18 20 22 22 22-24
高PEEP群(after protocol changed to use higher level of PEEP)
FiO2 0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5-0.8 0.8 0.9 1
PEEP 12 14 14 16 16 18 20 22 22 22-24

(説明)要するにいままでの研究と矛盾がないように高PEEP群で
高PEEP戦略は、高PEEP+低1回換気量が予後改善という以前のトライアルで用いられたPEEP値と同じになるように設定。少なくとも12時間12cm水柱PEEPがランダム化後必要とされた。実際には1日-7日の平均PEEPの相違は以前の研究とくらべても相違が無い。12cm水柱未満のPEEPを除外、当初48時間は最小14cm水柱を要した。
予測体重あたり6mlの1回換気量で、吸気プラトー圧30cm水柱未満となるよう設定



【結果】
第1-4日目の平均PEEP値は低PEEP群8.3±3.2、高PEEP群13.2±3.5cm水柱(P<0.001)
退院前死亡率は24.9%27.5%(P=0.48; 95%CI –10.0 ~ 4.7 %)
1-28日まで補給補助無しの平均日数低PEEP群平均14.5±10.4、高PEEP群13.8±10.6日(P=0.50)

【結論】予測体重あたり6mlの1回換気量と30cm水柱の呼吸吸気プラトーを限界とする人工呼吸を必要とする急性肺障害やARDS患者では、低PEEPでも高PEEPでも臨床的アウトカムは同様。

by internalmedicine | 2004-07-22 10:36 | 呼吸器系  

<< 細菌性結膜炎の所見と症状に基づ... ACE阻害剤は種類により高齢者... >>