食事性非ヘム鉄摂取量増加は血圧を下げる : 原因結果直結かどうかは?

鉄を非ヘム鉄とヘム鉄に分ける発想はしらなかった。

多線形回帰分析にて、食事の総鉄、非ヘム鉄は一致して血圧と逆相関を示した。

Relation of iron and red meat intake to blood pressure: cross sectional epidemiological study
BMJ 2008;337:a258, doi: 10.1136/bmj.a258 (Published 15 July 2008)

http://www.bmj.com/cgi/content/full/337/jul15_1/a258/TBL2
非食事由来、食事由来補正後

食事性の総鉄摂取、4.20mg/4.2MJ(2 SD)は、収縮期血圧 -1.39 mm Hg低下と関連 (P<0.01)

食事由来の非ヘム鉄摂取、4.13 mg/4.2 MJ(2SD)は、収縮期血圧 ー1.45 mm Hg低下と関連 (P<0.001)

拡張期血圧への影響は少ない

多くのモデルで、食事ヘム鉄摂取は、有意でない血圧との正の相関があった

食事・サプリメントからの鉄摂取は食事性鉄より相関が少ない。

Red meat摂取は直接血圧と関連い、102.6g/24 h(2SD)摂取なら収縮期血圧は1.25 mm Hg高くなる

red meat と 血圧の相関は多因子補正後も維持する


鉄の吸収・代謝・・・・の復習





Japan, China, the United Kingdom, and the United States participating in the international collaborative study on macro-/micronutrients and blood pressure (INTERMAP)のデータからの研究


1981年、”iron-heart”仮説が提示され、冠動脈疾患の男性と閉経前女性の頻度差の説明がなされた。すなわち、閉経前女性は総鉄貯蔵量が月経毎に喪失し、鉄の総量が冠動脈や糖尿病などに影響を及ぼすという仮説であった。当然ながら、その後の報告は一定しないものであった。


だれかが、適当な仮説を述べると・・・その後、検証するのに手間も時間もかかり、その間、確定されていない仮説が暴走するというのはよくある現象(たとえば、藤田元寄生虫学教授の寄生虫・アトピー抑制仮説など・・・)

一方で、ヘム鉄摂取(動物性由来)が多いことで冠動脈リスク増加するが、総鉄摂取量では層でなかったという報告があり、非ヘム鉄の影響が示唆された。非ヘム鉄とヘムは異なる代謝経路であり、異なる栄養素により吸収も影響される。故に異なる心血管疾患への病態生理への影響をもたらすこととなるだろう( Cade JE, Moreton JA, O’Hara B, Greenwood DC, Moor J, Burley VJ et al. Diet and genetic factors associated with iron status in middle-aged women. Am J Clin Nutr 2005;82:813-20.、 Hallberg L. Advantages and disadvantages of an iron-rich diet. Eur J Clin Nutr 2002;56:S12-8.


ヘム鉄と、非ヘム鉄に分けたことで、血圧への影響が分かれたわけだが、吸収メカニズムの違いも影響の一つだろう。非ヘム鉄のavailabilityは抑制・促進をビタミンCやアルコールにて影響を受け、ヘム鉄の吸収はより完全に、あるいは、あまり影響をうけないのである。
健康成人では、非ヘム鉄2.5%に比較して、ヘム鉄25%の吸収効率である。
ヘム鉄は、非ヘム鉄と異なり、血中フェリチンと相関し、総鉄体内蓄積量の指標としている。
非ヘム鉄の腸管吸収は鉄充分な場合には減少するが、ヘム鉄吸収には影響がすくない。

非ヘム鉄と血圧の逆相関は、今回の文献では補正されたが、非メム鉄の関連は多くの野菜由来の栄養源、たとえば、野菜由来蛋白、リン、マグネシウム、繊維、カルシウムなどにより補正される可能性がある(相関係数: 0.50 と 0.60)。たとえば、多因子モデル追加にて、非ヘム鉄の収縮期血圧への影響を38%ほど減弱する。


いろいろ勉強させてもらった。一番勉強になったのは、
haem iron, but not non-haem iron, correlates with serum ferittin, an indicator of total iron stores.(Cook JD. Adaptation in iron-metabolism. Am J Clin Nutr 1990;51:301-8.)
の、フェリチンはヘム鉄の指標だが、非ヘム鉄の指標ではないというところか!

もう一つ、お茶で吸収抑制されるのはヘム鉄、非ヘム鉄?
関係ないという話もあるが・・・
Tea consumption will not result in iron deficiency for healthy individuals who are consuming a varied and balanced diet.(Doc:http://www.tea.co.uk/gfx/news/tea%20and%20iron%20absorption,%20update%20jan06.doc

by internalmedicine | 2008-07-18 09:57 | 動脈硬化/循環器  

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