インフルエンザワクチンでは老人の市中肺炎を減少できない



インフルエンザワクチンが老人の市中肺炎リスクを減少させるかどうか?


Jackson ML, et al "Influenza vaccination and risk of community-acquired pneumonia in immunocompetent elderly people: A population-based, nested case-control study"
The Lancet 2008; 372:398-405
【序文】肺炎は、老人インフルエンザにおいて頻度の高い合併症で、インフルエンザワクチンで予防できる可能性が考えられていた。
老人でワクチンされた場合、肺炎の入院リスクが少ない。これは、基礎的な健康状態によりバイアスがかかっていて、これでは判定困難。
【方法】住民ベースの、nested case-control studyで、対象者は免疫正常の老人(65-94歳)で、Group Health (a health maintenance organisation)
2000、2001、2002年インフルエンザシーズンとその端境期
外来と入院CAPのエピソードをもつ症例では、カルテ、胸部レントゲンにて確認
ランダムに2つの年齢マッチ、性別マッチの対照を選択
介入曝露はインフルエンザワクチンで、共役因子である、喫煙歴、肺・心臓疾患の有無重症度、脆弱性指数を決定した。

【結果】1173名のケースと2346名の対照
合併症有無と重症度補正後、インフルエンザワクチンは、インフルエンザシーズンの市中肺炎と相関せず(オッズ比 0·92, 95% CI 0·77–1·10)

【結論】老人におけるインフルエンザシーズンのインフルエンザワクチンによる肺炎リスク軽減効果は以前考察されていた程度はないかもしれない。



心血管合併症や呼吸器疾患、腎臓疾患など基礎疾患にて、炎症がかなり悪さをすることがわかっている。そういった疾患も総括的に考えるべきであり、健常老人の肺炎だけでワクチン効果がないというのは勇み足であろう。

ただ、ワクチンが老人の全原因肺炎のリスクを減少に寄与しなかったことは、ワクチン開発と推奨に影響を与える可能性がある。

by internalmedicine | 2008-08-02 07:53 | 呼吸器系  

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