PSVTの診断・マネージメント

いろいろ不整脈の本を読んだが、結局、AVNRTとAVRTの区別クリアカットに書いている記述にぶち当たらない。・・・Mayo Clinic Proceedingが無料で閲覧できるので、読み進めることにする。

Supraventricular Tachycardia: Diagnosis and Management
Mayo Clinic Proceedings, 12/02/08
http://www.mayoclinicproceedings.com/pdf%2F8312%2F8312scd.pdf

PSVTのECG解釈
(1) tachycardia rate
(2) mode of onset and termination of the tachycardia
(3) relative position of the P wave within the R-R interval
(4) morphology of the P wave
(5) change in QRS morphology, including variability in cycle length and relative movement of the atrial ECG and ventricular ECG during variability in tachycardia rate
(6) effect of intermittent BBB(脚ブロック) on the tachycardia


1)心拍数
・150/分は、2:1房室ブロックを有する心房粗動の疑いが強い(粗動の心房rateは300/分であるため)
・心房rateが160-170/分以下・P波が見えない場合、房室結節のslow-pathway componentの存在の可能性である。このタイプの最頻PSVTはAVNRTのような典型的なAV nodal reentryである(fig.1を参考にとのこと)
・心房頻拍、AVRTで、前向き方向へのslowなAV nodal pathwayはAVNRTより頻度が少ない。


2)発症・停止様式
・多くのPSVTはPACが引き金で、もしPACが長いPR間隔の心室への伝導ではじまっているなら(すなわち、PR間隔の”jump”)、心室への房室結節内の前向きslow-pathway伝導によるものと考えて良い。房室結節rentrant tachycardiaは、このメカニズムでたいてい始まる。
・もし、PACが密にcouple化していたら、房室結節の生理的物質が枯渇することにより期外収縮サイクルにおいてPR間隔が延長する。
・心室性期外収縮から始まる上室性頻拍は、通常、房室結節依存の頻拍である。
・上室性期外収縮はほぼ絶対に心房頻拍を生じない。

・停止時P波が最後の場合は心房性頻拍ではないことが普通
・房室結節のブロックにより頻拍が停止するのが普通で、房室結節依存性頻拍で生じる。
・心房頻拍は通常ventricular complexで停止するが、房室結節依存頻拍の一部もこの様式のため診断には役立たない。(図2のシェーマに、PSVT terminating with a ventricular complex と 心房頻拍の可能性が少ないパターンであるatrial  complexで終了例がしめされている)


3)RR間隔内でのP波の相対的ポジション
long RPとshort RPの意味づけを考えPSVT morphologyの分類表記を考えなければならない
心房・心室のactivationが同時に生じたら、AVRTは除外可能、すなわち、typicalなslow-fast AVNRTを意味する。
・極端に速いPSVTでは、RP間隔・PR間隔とも短く2つを鑑別困難。しかし、より遅いPSVT rateなら、RP間隔が短いことは通常AVRTを示唆し、RP間隔が長い場合は通常心房頻拍を意味する。
・長いRP間隔のmorphologyは、また、典型的AVNRT、AVRTを意味する場合もある。
・心房性頻拍は技術的に長いRP頻拍であるが、P波のmorphologyの比較、洞性リズムと頻拍時の比較で鑑別可能。
・ECG解釈のガイドラインは電気生理学的データで確認されている。
・Kalbfleishらは90%異常のAVNRT、AVRTの87%がshort RP頻拍であったと報告。逆に心房性頻拍の11%のみが短縮RP頻拍であった。


4)P波の形態
・P波が同定できたらラッキー、II、V1誘導で評価
・下壁誘導でP波が陰性なら、AVNRTやAVRのような接合部リズムだが、心房性、低位の心房なら下壁誘導で陰性となろう。心房内で逆方向の伝導なら 陰性P波が生じる。
・左→右、または逆方向の活性化をECG誘導解析で判明する。
・I、aVLのP波のmorphologyの解析にて、右房頻拍発生源の場合P波は陽性またはbiphasic(初期成分陰性で、あとが陽転)の波形がaVLで認められる。右房が最初に活性化すると、左室へ脱分極が広がり、そしてaVLにむかう。
・左房発生源の場合は、P波は陰性か、isoelectric(電気的に中和)がaVLでみられる。左房発生源なら、加えてP波陽性がV1でみられる。要するに、心房頻拍が右房発生源のとき、V1誘導で陰性Pもしくはbiphasic Pが見られるのと逆である。
心房性頻拍による長いRP頻拍のとき、P波のmorphologyは異常発生源部右位の近似化に役立つ。このアルゴリズムは医師が頻拍をablateするとき有効であろう。


5)QRS形態の変化
・心室rateがirregularly irregularなときは心房細動の診断を示唆
・PSVTのほとんどのサイクル長は理論的にもregularであるが、dualあるいはmultiple anterograde AV nodal pathwayの時は同期する。
・わずかな心拍は診断上有用となる。SVTの間のQRS変化がP波の変化で始まるなら、たとえばAA変化をVV変化が超えるなら、心房性頻拍ではなく、接合部性のreentrant tachycardiaであるだろう。逆に、AA変化がVV変化以上なら、あまり診断には役立たない。
・QRS alterans はQRSの振幅のphasic alterationであり、そのメカニズムは不明であり、ECG誘導の1つ以上でみられるものであり、これは非特異的所見である。AVRTとともに生じることが多く、orthodromic AVRTの25-38%で、通常の伝播方向で房室結節に向かうものである。AVNRTやAVRでも生じ、13-23%にあるが、心房性頻拍では見られない。


6)頻拍における間歇性房室ブロックの影響
BBB aberration発生によるAV rateの変化が見られる。これは、頻拍回路の脚分枝の一部が活性化するので、心室心房伝導時間の遅延を生じ、副伝導路に平行して生じる。
・この特徴があれば、AV reentry以外のSVT全てを除外できる。
・副側伝導路と同側に生じるBBBは心室心房伝導時間の遷延化させ、一般的に、頻拍サイクル長に影響をもたらす結果となる。
左脚ブロックが頻拍の時改善し、サイクル長が減少すれば、同側副伝導路の存在を示唆する。逆も同様。
・逆に、左側の側副路+右脚ブロック、そして逆パターンである右側側副路+左脚ブロックなら、頻拍サイクルに影響を与えない。
・脚束は頻拍回路の促通部分ではないのだから、心電図では、AVNRTでの右脚ブロックの突然の出現を意味している。

by internalmedicine | 2008-12-03 12:11 | 動脈硬化/循環器  

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