高齢者(85歳)の心血管リスク予測は、Framinghamスコアの範疇外:ホモシステイン濃度が重要

心血管疾患病歴のない高齢者(85歳を想定)では、ホモシステイン濃度が正確に心血管死亡率の予測因子となる。それに比べ、Framingham risk scoreは予測因子となりがたい・・・という論文。

Use of Framingham risk score and new biomarkers to predict cardiovascular mortality in older people: population based observational cohort study
BMJ 2009;338:a3083, doi: 10.1136/bmj.a3083 (Published 8 January 2009)
Leiden 85-plus Study (1997-2004)は5年フォローアップ観察前向きコホート研究
オランダのLeiden市の一般住民対象
85歳の住民サンプル215名の女性と87名の男性で、心血管疾患病歴無し
主要測定項目は、死因別死亡率、Framinghamリスクスコアを含む古典的リスク要因と、血中濃度(ホモシステイン、葉酸、CRP、IL-6)をベースライン評価

フォローアップ中、302名中108名死亡で、32%(35/108)が心血管死
Framingham risk scoreによる心血管死亡率予測できず(area under receiver operating characteristic curve 0.53, 95% 信頼区間 0.42 ~ 0.63)、新しいモデルでも同様 (0.53, 0.43 ~ 0.64)。

バイオマーカーにてもっとも予測力強い(0.65、0.55-0.75)

ホモシステイン予測モデルは、追加的予測因子や多因子との組み合わせでも、判別的パワーを増加しなかった。




動脈硬化性の脂質異常のような要因は正常からのずれの程度と暴露期間により影響され、小血管内の生物学的加齢変化と"disintegration of tissues over time"、催動脈硬化性脂質異常のようなリスク要因の時間的暴露の累積が関与(心血管疾患の年齢という要因 2008年 03月 04日))
し、若年者と高齢者と同じリスク要因という訳にはいかないのだ。

比較的若年主体のデータベースから出てきた現象をそのまま高齢者に適用し続けることだけは避けなければならないだろう。

それと、大事なことは、ホモシステイン濃度が予後推定に重要と言っても、ホモシステイン仮説に基づく治療が効果有るかどうかは不明である。

参考:
ビタミンB・葉酸でホモシステイン値は減らすが、臨床的イベントは減らさず 2008年 05月 07日

ビタミンで心筋梗塞二次予防を悪化・・・ホモシステイン仮説の否定 2006年 03月 13日

葉酸・ビタミンB投与による癌抑制効果証明できず 2008年 11月 05日

ホモシステイン仮説の一部復活?:卒中に関しては葉酸有効・・・さらなる混迷へ 2007年 06月 03日


高ホモシステイン血症と骨折しやすさは関係有り 2004年 05月 13日


追加:ROC解析について:http://misg.umin.ac.jp/netconf/netconf_3/netconf_3_roc1.html

by internalmedicine | 2009-01-23 09:37 | 動脈硬化/循環器  

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